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Mちゃんとお父さん

※ 性虐待に関する記述があるためフラッシュバックにご注意ください。

Mちゃんの家族は、とても仲のいい友達のような家族でした。表面上は。

Mちゃんが生まれたとき、Mちゃんのお父さんは女性とハワイにいました。
Mちゃんのお父さんはのぞきが趣味で、双眼鏡でよく向かいのマンションやビルの窓を覗いていました。
Mちゃんが小学生だった頃、父親から包丁で刺し殺されそうになったり、マンションの高層階から落とされそうになっていたそうです。

そんなMちゃんのお父さんの話です。

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Mちゃんの父親は性に奔放な人でした。性教育だと言って娘に男性器を見せたり、Mちゃんに裸や自慰行為を見せるよう強要したりしていたそうです。Mちゃんは父親から「子は親に裸を見せなければいけない」と教えられていて、それを高校生まで信じていました。

Mちゃんのお父さんは児童ポルノをたくさん持っていました。日本人や白人の幼い女の子の局部がアップで映されている写真がたくさんパソコンに保存されていました。
Mちゃんが中学生になったとき、お父さんのパソコンには制服を脱がされている女の子の写真がたくさん入っていて、Mちゃんは制服を着るのがとても嫌だったそうです。

Mちゃんが中学生の時、親族の1人が癌になってしまいました。母親が看病のために泊りがけで家を空けていましたが、その期間中に父親からの性的な悪戯がエスカレートしたそうです。

夜になるとMちゃんの布団には毎晩父親が入ってきて、性器をしごかせたらしいです。
足で行為をさせられたとき、Mちゃんは父親から「上手だからいっちゃうよ」と言われ、足にべとべとしたものがつきました。Mちゃんはまだ「いっちゃう」がなんのことなのかわかりませんでした。
Mちゃんは、寝ているあいだにパジャマのズボンを脱がされて下半身を舐められました。なにをされているのか理解できず、怖かったので寝ているフリをしました。
ある日の夕方、Mちゃんは自慰行為を強制されました。

この時期、仲良しの先輩が交通事故で亡くなり、その翌週には好きだった漫画家が殺される事件がありました。Mちゃんは、自分の生きる意味がわからなくなっていました。

Mちゃんは信頼していた担任の先生に、父親から体を触られていることを打ち明けました。しかし後日、その先生から考えすぎだと思うぞと言われました。Mちゃんは大人に頼る事を諦めました。

Mちゃんは中学を卒業し、海外留学しました。
ホームステイ先では「いつまで経っても裸を見せろと言われないけど、いつやるんだろう?」と不思議に思っていましたが、自分から切り出すのも嫌だと思い黙っておくことにしました。(もちろんそんな儀式は親子であっても必要ありません。)

海外で高校生活を送っていたある日、Mちゃんはインターネットで性的虐待の体験記に辿り着きます。そこで初めて父親の洗脳や、自分がされてきた行為の意味を理解しました。

多くの性被害者がそうであるようにMちゃんは自分の体が汚いと感じ、何度も何度もシャワーを浴びました。そして精神的に不安定になりリストカットをするようになりました。

学校ではスクールカウンセラーが自傷の跡を発見し、臨床心理士をMちゃんに紹介しました。
カウンセリングでは「このまま帰国するのは危険です。母親に話すか別居するなどして、安全な居場所を作ってください」と言われました。

Mちゃんは母親に国際電話をかけ、父からの性的な行為について打ち明けました。しかし、最初は勘違いではないかと言われ信じてもらえませんでした。もう少し具体的な話を伝えると、最終的には離婚するから帰っておいでと言われました。

Mちゃんは高校を卒業し、帰国しました。


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多くの性虐待サバイバーは、自分の経験について明らかにしません。
「家庭内は安全」「親は自分を守ってくれる」「まさか実の父親に襲われるはずがない」という安心感を打ち破られ、精神衛生へのダメージは非常に大きく、解離症状やフラッシュバック(PTSD)、希死念慮などの後遺症が残ります。
Mちゃんも20年間、自分の体験について語ろうとしませんでした。
Mちゃんの父親は数年前に肝炎で他界しましたが、彼女は今もPTSDや希死念慮に苦しんでいます。

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