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伊勢音頭恋寝刃

2024年3月 三月大歌舞伎 夜の部@歌舞伎座

2時間もののサスペンスドラマ風タイトルをつけるなら、
「伊勢音頭殺人テロ事件〜消えた刀の行方〜」


物語の背景

寛政8年5月4日に起きた、実際の殺人事件を元にしたお話。
しかも最初に芝居になったのは、事件後わずか10日。歌舞伎になるまで2ヶ月かからず。先月かかった新版歌祭文 野崎村とかもそうだけど、歌舞伎には実際に起きた事件を題材にしているものが結構ある。

劇中で、主人公の祖父母と父親の命日がたまたま同日、それが5月4日だとわかるくだりがあるけれど、それは実際の事件の日にしていたとは。。こわ。。

江戸時代の人にとって、歌舞伎の新作は一種のワイドショー的な感覚だったのかもしれないな。

それと、サスペンスドラマでよくあるみたいに、その地方の観光案内も兼ねつつ、ドラマが展開していく。

例えば、「相の山」の場は、伊勢神宮の内宮と外宮の間にある、参拝客で賑わう界隈だし、「二見ヶ浦」の場は、今でも夫婦岩(トップの写真)で有名な場所。
「お伊勢参りは夢のまた夢だけど、ちょっと行った気分になるねぇ」なんて、当時の人たちは観劇してちょっと旅行気分にもなれたのかも。

主人公・福岡貢の人物像が定まらない

なにせ実際の事件後わずか2ヶ月足らずで歌舞伎にしちゃったわけだから、「太々講」の場とか、場面によってはほかの演目からまるっと拝借みたいな作りになっているらしい。

今月の筋書きで福岡貢を演じる松本幸四郎も、こう言っている。

「油屋」での貢に和事味と強さがある個性が突出しているので、他の場面で別人のように見えないよう、人物像を一貫させる難しさがあると思います。

三月大歌舞伎筋書き(2024)

別演目と似ているといえば、廓・油屋で妖刀・青江下坂を使ってどんどん人を切ってしまう大詰めの場面は、先月の籠釣瓶花街酔醒の大詰めとかなりかぶる。でも籠釣瓶〜のほうは、明治時代に脚本ができているから、伊勢音頭〜のほうは拝借された側なのかな。

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