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「問題がない」という静寂な問題~100人インタビュー29人目 安藤敦子さん

「インタビューされたい」と胸に秘めている人は多い。
100人インタビューはそんな願望に応える企画であるのと同時に、点と点を繋ぐ役割も担っていると勝手に自負している。 

インタビュー希望者は公式LINE➡https://lin.ee/qbmp3HDに「インタビュー」とメッセージを。現在希望すると来年のインタビュー予定。

#029 「問題がない」という静寂な問題~ 安藤敦子さん

29人目のインタビュー相手は愛知県東海市で「あんどうピアノ教室」を主宰し、ママや指導者向けに「はなまるコーチング」セッションも提供している安藤敦子さん。

10年以上前から「コーチング」という手法を自身のピアノ教室に取り入れてきたという敦子さん。コーチングを始めたきっかけを聞いてみた。

コーチングと口癖と

きっかけは息子です。長男の夢を応援したいなって思ったんです。その頃、彼には”パイロットになる”という夢がありました。夢を叶えるため、地元から少し離れた私立の進学校に通い始めたのですが、新しい環境にうまく馴染めなかったのか、「俺って運が悪いな」と毎日言うようになったんです。それがすっごく気になって。

息子さんのネガティブな口癖とコーチングがどう結びつくのだろう。

コーチングって相手のやる気を引き出したり、行動をサポートするって側面があるのですが、それは相手の可能性を100%信じることで成り立つんです。でも当時のわたしは相手を信じる以前に、自分自身が不安だったんですよね。

そんな折、ピアノの先生向け月刊誌に載っていたコーチングに目が留まり、講座を受講することにする。

普段、母親として息子にする声掛けを、講座内の実践ではボールを使って再現したんです。「○○って言ったでしょ!」「何してるの?」という言葉をボールと一緒に相手に投げる。受け取る側からすると、その言葉は声掛けではなく、物をぶつけられている感覚なんだということを教えられました。それを生で見て、泣いちゃいましたね。

暴言を吐いたわけじゃない。手をあげたわけじゃない。それでも息子に痛みを与えていた。そのことにハッとしたという。
そうして徐々に、本当の会話というものができるようになっていくと、長男との関係が改善していった。

「問題がない」という静寂な問題

今、長男の話をしたんだけど、次男の話もあってね。

そう覚悟を決めたように、敦子さんは今までとはテンポを変えて、静かに語り始めた。

次男のときは2人目の子育てで、胎教だったり、そういうことに興味が湧きました。成果もでている気がして、とても育てやすい子でした。でも大事なことを見逃していました。

問題が明るみに出たのは、次男くんが大学入学してから。敦子さんが二人の男の子を育て上げた達成感を味わい、さあこれから自分の好きなことを思う存分するぞ!とワクワクしていた時だった。

大学の研究室で、パワハラに遭っていたんです。パワハラだけじゃなく、イジメにも。
気付かなかったし、次男も相談してくれなかった...。私が勉強のできる子を求めていると勘違いさせてしまったせいで、SOSを出せなかったんだと思うと...。


自分の”できる”ところを評価してくれる母親に、自分の”できない”を見せたくなかった。それは子供として当然だし、次男くんのせいでも、敦子さんのせいでもない。
でも当事者がそう思えないことも理解できた。

優しくて、大人しくて、勉強ができて、いい子だと思ってました。でもそれって、長男と私の関係を見て、遠慮して、我慢していただけのかもしれないんですよね。子育てが完了すると思っていた時期に起きた、一番辛い出来事でした。

精神的なダメージを受けた次男くんは数年と時を経て、やっと穏やかに日々をすごせるまでに回復した。でもまだ「社会復帰」という形には至っていない。それでも今、敦子さんはこのインタビューで初めて次男のことや過去の子育てについて公表する決意をした。

私があのとき「できる」ということを喜ぶばかりじゃなかったらな、と。
その想いを今はピアノの生徒たちへ向けています。
賞を取らせることにこだわりすぎてしまう時期もありましたが、それは違うぞ、と気付かせてくれたのが次男でした。私のピアノ講師としての転換期でもありました。


「プロフェッショナル~仕事の流儀」のオマージュとして、この100人インタビューでも毎回同じ質問をして締める。 

あなたにとってあなたとは?

味方です。
次男のことにしたって、私はコーチングを通して何を学んでたんだ?!ってなるわけです。以前なら自分を責めて、許せなかったと思います。でも...その時の私は私なりに頑張っていたはずで。そのときの精一杯だったんだ、と思えるようになりました。

過去の自分を責めずとも、今を受け入れることができる。それがかけがえのない息子二人が教えてくれた最も大切なことだったのだ。

敦子さんのFacebookはこちら
https://www.facebook.com/atsuko.ando.54
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敦子さんのインスタグラムはこちら
https://www.instagram.com/andou.piano

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