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移籍市場が始まるにあたって考えたこと②(増資)

こんにちは。marieです。

今回は②です。誰得な増資の仕組みについて書いておこうと思います。

増資に関しては、様々な有識者の方が既に説明してくれていたり…スペースでお話しされていたり…ということで、私が書いても内容が同じになってしまうので迷ったのですが、せっかく自分でも整理したので文章で残しておきます。

関係ないけど、ちょうど4月~GWくらいに、大学で債権の破棄とか新株予約権について勉強してたんですよね。そしたら次の日にアブラモビッチ氏が債権破棄するとか言うし、スパーズは株式発行するし、こんなに趣味に役立つ勉強ってある??(逆か?)と感動してしまいました。

やたらスパーズへの理解が深まるので、財務会計勉強してよかったー!と思っている最近です。だいぶ気持ち悪いアプローチなので、友達や同期には言っていません。笑

①はこちらから↓

増資って何よ

私が持っている最も厚い教科書「新・現代会計入門」にはこう書いてありますよ。

資本金を増加させることを「増資」という。

まず資本金ってなんだよ…という感じかもしれませんが、資本金というのは普通に会社自身のお金です。会社を設立するとき、さすがに0円では始められないから、設立金としてさすがに数万円くらいは会社に入れるじゃないですか?それです。

で、この増資にはいくつか方法があります。

①新株発行 ②法定準備金の資本組入れ ③配当可能利益の資本組入れ ④吸収合併による新株発行 ⑤新株予約権の行使

内容はともかく、みんな株株言っていますよね?今回スパーズがやったのは⑤です。(正しくは、⑤をやるための準備をした。)増資とは、主に株式を発行して資金調達することなのです。

株式って何よ

株式は会社の運営権のようなもの。

株式会社においては、株式を大多数持っている人や会社が、その会社の実権を握ります。(皆さんも、どこかの企業の株を買い占めればそこの社長になれますよ。スパーズの株は公開されていないので、残念ながら買えませんが…)

スパーズの第一株主はENICです。だいたい85%くらいを保有していて、だからENICの社員であるレヴィが会長をやっています。

さらに、そのENICの株をもっているのは、ほぼ100%ジョールイスとダニエルレヴィです。名実ともに、ENICもスパーズも、二人のものだと言えますね。

ENICはスパーズの株をもう85%も持っており、実権を握っているので、今回株を買い増したところで運営権や影響力はほとんど変わりません。あくまで株式を追加購入することでスパーズに対する投資をする、ということになります。

£150Mはルイス氏がくれたのか?

結論としては、£150Mはジョールイスが投資してくれました。スパーズは£150Mを使おうと思ったら使える状態になっています。

ただ厳密にいうと、今くれたわけではないです。「必要になったらくれてやろう」という準備をした感じです。でも今までは、必要だって言ってもくれることは絶対なかったので、とんでもない変化です。

(そもそも何をもって「必要だ」というのかが、一部のサポーターとはずれてる可能性があるよな。「優勝するために必要だ」だけではロジックとして通るわけがない。ENICは優勝するためではなく、利益を拡大するためにやっている普通の営利会社だから…)

なんですぐくれないの?

普通に、手元にそこまでの現金がないか、満額使わないのであれば渡すのは無駄なので、準備をしとくに留めているのだと思います。

そこで使っている方法が「新株予約権」です。私はこの用語がわかりづらくてとても嫌いですが(だって普通に生きてて新株予約権発行する機会とかないし…)、株を発行して資金調達する準備をした、というような意味です。

「新株予約権の発行」は、権利を行使してくれたらいつでもいけるよ!という状態にすることですね。

オーナーのポケットマネー投資との違い

「クラブにオーナーがお金を入れる」ということで、やってることは同じです。やり方と、投資に対する見返り・スタンスが違うだけ。

たとえば、私の知り合いに、みんなからお金を借りて全然返さない悪質な女子がいるのですが(むかつくからこんなところで例に出すw)

彼女に「友達と会社やろうと思ってて…準備のために10万円貸して!」と言われて貸す場合、3つスタンスが考えられます。

①10万円は一旦あげるけど、もし利益が出たらその数%は永遠にもらい続けるし、会社の権利の一部ももらうよ。利益が出そうなら貸すよ?というのが今回の株式発行

②10万円は貸すけど、絶対返してね!というのが銀行から借りる場合

③10万円あげるよ!というのがチェルシー

です。見返りが違うんです。

ちなみに、「10万円あげるよ!」というのは税務上寄付でしかないのですが、寄付にすると税金がかかったりよくわかんなくなるので、チェルシーは会計上②で、「10万円は貸すけど返してね。あっ1000年後とかでいいよ~」という処理をしています。

①のことを株主資本コスト、②③のことを負債コストと言ったりもしますよ。

財務諸表上の動き

これは別に多分理解しなくていいし、趣味の世界に近いですが、財務諸表(BS)では、①の投資は純資産に入り、②③の投資は負債に入ります。(②③は借りてる相手が違うだけなので、会計処理としては同じ)

※③は、負債に入れないやり方も色々あると思いますが、基本的にはそうなると思うので負債にしときます。

①はここに入るよ。(準備段階では入らないけど、行使したら)

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②③はここに入るよ。

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どっちが財務上いけてるかって言ったら、それはもちろん①です。②③はいわゆる「借金」だもの。銀行や投資家が企業の安定性を考えるときに、借金が多いところは安全性が低いと敬遠しますよね。

スパーズの場合は、ただでさえ新スタのために銀行から莫大なお金を借りていて②がめちゃくちゃ多いので、さらにオーナーからもお金を借りて②を増やしたら、もう銀行はお金を貸してくれないかも。

こういった企業の安定性は、自己資本比率(総資産のうちどれだけが自分のお金か)というもので表したりもします。

ちなみに、これはチェルシ―のBS。

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固定負債に£1Bちょっとあります。これがオーナーから借りているお金でしょう。

出典

https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/01965149/filing-history

つまり?

ジョールイスは、スパーズの利益拡大とそれに伴う自分への見返りに向けて、今スパーズに投資したのだと思います。

私たちも、大人だと「あの会社成長しそうだから投資する」とかやる方はいると思いますが、それに近い。この例で、自分のお金を溶かす気で投資する人はいないでしょう。みんな元金+αで回収するつもりのはず。そういうことです。

また、企業としても、増資というのは事業拡大するぞ!というときに行う手段です。今回、クラブの発表では「ピッチ内外に使用する」とのことでした。移籍金には使うとは言っていないけど、移籍金含めた色々なことに投資するよ、ということですね。

常に誰かから野心を心配される謎のクラブ・スパーズですが、これ以上ない野心を示したのではないでしょうか。

スパーズは上場していないため、この増資の件も特にプレスリリースする義務はありません。それにもかかわらず、わざわざ大々的に発表したのですから。

今後が楽しみであり、不安であり、楽しみですね。

今回は以上です!

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