見出し画像

月曜日、雨。

どんな好きな音楽にしていても、嫌いになってしまう音、目覚まし。今日も意識の底をざらりと触れて現実へと引き上げさせる。

テレワークが推奨されてあっという間に1ヶ月。すっかり億劫になった出勤という大タスクを目の前にため息をつく。億劫になってしまったのは、通勤か、それとも。答えはすっかり出てしまっている様な気もするけれど。

家を出ると雨がばらついていた。
昨日までの優しい水色ではなくて、グレーがかった白の世界。
こういう空は好きじゃないなあ、とため息をつきながら駅へ向かう。ため息をついたら幸せが逃げるよ、なんて思う自分と、ため息ぐらいで逃げる幸せなんて願い下げだと思うひねくれた自分を俯瞰しながら。

きっとどっぷりとはまるだろう、作家さんの短編集を開く。
人生を前に進めていくためには、イージーモードを願ってはいけないんだろうか。何かこれと言った経験がなければいけないのだろうか。
目に見えない「誰か」を思い浮かべては、綺麗だけでは成り立たないブレンドされた人生を想像しながら読み進める。

もしかしたら晴れ間が差しているかも、と一縷の願いを込めて一駅手前で降りる。いそいそとカメラもリュックにつめこんできた。
これだけ「人生はハードモードだ」なんて勝手にこじらせておきながら、毎年変わらず咲く桜には少しだけそわそわする。毎年飽きるぐらい桜のトンネルを通り続けてきたというのに。

ひんやりとした風が吹いた。
どうしていつも春は一直線にやってこないのかと今日2つめのため息をつく。そのままだと、今日が終わる頃には煩悩の数をあっさりと超えていそうな。

桜は咲いていた。
でも、今日は美しくない、と思った。
また明日にしよう、と決めた。
何度も迷って、落ち込んで、ゆっくりと浮上を待って、やっぱり日々は非情で。
絶望をなぞる私が、また明日、なんてちょっとだけ楽しみにしているのがおかしいけれど、そんな時間があってもいいかも、と思う。
きっと、冬は終わる。

サポートありがとうございます!旅、写真、文章に大事に使わせていただきます◎