「ザ・争続」仁義なき戦い ～遺産分割調停のリアル〈従兄との対峙〉

　
今回の登場人物

被相続人 (Ｓ)　Ｎ家の三男。独身貴族を謳歌し７０歳過ぎて急死。遺言書を残さなかったために争続を引き起こす原因になった人物。

元相続人 (M)　N家の長女。同居していた次女に看取られて昨年末に病死。
相続人 (Ｒ)　　元相続人(M) の次女。５０代半ばの独身で非正規職につく。メンタルに問題を抱え、争続に発展させた人物のひとり。

相続人 (Ｔ)　　N家の次女。認知症で弁護士の後見人あり。３人の子持ち。
従兄 (Ｋ)　　　相続人(Ｔ) の長男。還暦で独身。同居する母親の介護担当。被相続人が入院した時の手続きと金銭の管理者で遺産分割調停の申立人。

相続人 (Ｉ)　　N家の末っ子。発達障害の疑いがある筆者の母で独居老人。

従姉の闇が明かされる

従兄Ｋ　「Ｒちゃん (相続人Ｒ)、いまアルバイトでしょ？　出身大学の講師は随分前にクビになって、週に何日か別の大学でバイトしてるんだよね」
私　　　「あぁ・・・そうみたいですね（毎日は働いてなさそうだし）」

従兄Ｋ　「あの人、自分が原因で３年前に亡くなったお父さん (従姉Ｒの父) の相続も解決してなくて、お父さんの口座が凍結されたままなんだって」
私　　　「えっ・・・？ (驚愕して)　そうなんですか？」

従兄Ｋ　「医療ミスがあったとかでお父さんが入院してた病院と揉めて、地元じゃ有名らしいよ？ クレーマーで (苦笑)　市役所でもアレコレやらかしたみたいだし」

私　　　「そうなんですか（なぜ東京に住んでる従兄がそれを知ってる？）伯父さんが亡くなったの何年も前ですけど、病院の対応に不満があったみたいですね」

従兄Ｋ　「困ってるんだよねぇ、Ｒちゃんには・・・ハナから喧嘩腰で話にならなくて (苦笑)」
私　　　「伯父さん (被相続人Ｓ)が投資してた仕組み債のシステム理解してないみたいで、債券には誤解があるんですよね、Ｒさんは」

従兄の弟　「もう電話にも出てくれないから、資料持って〇〇 (従姉Ｒの居住地) まで説明に行こうと思ってるんですよ」

私　　　「あ～、それはやめた方が (苦笑)　言い難いんですけど、Ｋさんたちに対する拒否感が強いんですよ、彼女・・・〇〇まで足を運んでも家に入れてはくれないだろうし、門前払いの可能性高いです」

従兄Ｋ　「そりゃあ困ったねぇ・・・(苦笑)　伯母さん (元相続人M) はどうなんだろう。 身体悪いって聞いたけど、認知症とかは無いのかな」

私　　　「お身体は悪いみたいですね、車椅子の生活らしいから・・・でも認知症ではないみたい。 頭はしっかりしてるってＲさん言ってますけど」

従兄Ｋ　「まぁ、うちの母も半分ボケてるけどね (苦笑)」
私　　　「伯母さん、(相続人Ｔ) どんなご様子ですか・・・？ 入院はされてないんですよね？」

従兄Ｋ　「入院はしてないけど、最近は食べられなくなったね。　(寿命が) あと１年もつかどうか・・・もともと内臓が悪いから」

母の親族への嫌悪

従兄 (Ｋ)からメンタルに問題があるらしい従姉Ｒのネガティブな話を聞かされ、私は母の親族が嫌いだと思いました。従兄たちと従姉は世代が近いので子どもの頃から親しい印象があったのに、口を開けばお互い悪口の応酬で。

都会育ちの私は幼い頃から、地方の古い価値観が染みついた母の親族たちが苦手でした。

子どものいない伯父たちは可愛がってくれたりもしたのですが、子持ちの母や伯母たちは互いの子を巡ってライバル視、くだらない見栄や競争心に煽られていたからです。

誰それの娘が優秀だとか誰かの息子が一流企業に入社した、うちの娘が医者と結婚したなどと言っては愚かしい競争を繰り広げていた母の親族を、子ども心に冷めた目で見ていました。

そんな親族たちと何でも相談し合えるような温かい関係を築けるはずもなく、子どもたちが大人になるとお互い疎遠になり、今となっては冠婚葬祭でしか顔を合わせない他人のような親族関係となりました。

皮肉なことに相続問題をきっかけに、それぞれが老いた親の代理で疎遠だったいとこ同士が連絡を取るようになったものの、もともと親しくない間柄では互いに不信感が芽生えて疑心暗鬼となり、醜い争いに発展していった。

亡き伯父の遺したマンションで年の離れた従兄たちと対峙したことで、嫌悪していた母の親族とはこれで縁を切ると、私は心に決めました。

実際、従兄たちと会ったのはこの日が最後で、従姉たちに至っては数年前に親族の葬儀で会ったきりで顔を合わせることすらなく、いとこ同士はその後、遺産分割調停の場で対立することになります。