
35年物のスーツケース
私は物持ちが良い、といいますか、一度気に入ると愛着が湧き、長い事使い続けるのが好きです。
3年程前、ベルギーから帰国し、暫くは使わないだろう、と、クローゼットの中に入れておき、1年毎に出しては懐かしみ様々な思いを馳せる愛着を持つ品があります。それは、35年前、⇩祖母に買っていただいたスーツケースです。

スーツケースを引っ張る為の革紐がボロボロになり、ベルギーからの帰国途中、とうとう切れてしまいましたので、応急処置として紐を付けましたが、このスーツケースに合った革紐を近々作っていただこうと思っています。ベルギーに住んでいました頃も、英国やフランス、ドイツ、オランダ、ルクセンブルグ、スイス等、ヨーロッパをこのスーツケースと一緒に仲良く一緒に旅しました。これからもずっと、一緒です☆
このスーツケースは35年程前、父の住むブラジルへ一人、旅立つ事になりました為、祖母に買って貰いました。
昔からこの、ボルドー色が好きで、祖母とデパートへスーツケースを求めに行きました際、真っ先に目に飛び込んで来ましたのがこちらのスーツケースでした。片方に引き手がついていました。
お店の人のアドバイスに(お店の人も一人で地球の裏側まで行く、という私の話にビックリしていました)14歳だった当時からやせっぽっちで、身長は160cmなのに体重が36キロくらいしかなく、ひとりで大荷物を運ぶのは大変、とのこと、ひと目惚れしましたこちらのソフトケースはピッタリです、とすすめられ、とても嬉しく飛び上がり、大喜びしましたことはいつまでも忘れません。(今は随分軽量になりましたが、当時のハードケースは凄く大きく、そして重かったのですよね)
ソフトケースですと素材的に軽く、荷物を入れても楽に運ぶ事が可能でしたので、小さいですが、当時の私には十分な大きさでした。 最悪パスポートとお金さえあれば、あとは何とかなるさという、楽観的な気持ちで旅立った日を昨日の事のように思い出します。
同級生たちにさよならを言うのがとても辛くて、平日、誰にも告げず旭川空港を発ったのですが、何と親友が授業を抜け出し旭川空港まで駆けつけてくれまして、私の為に号泣してくれましたこと、とても有難くて嬉しくて、あの時のセーラー服姿の彼女の泣き顔はいつまでも心に残り忘れられません。
「マリちゃんが学校に来ないからおかしいと思ってたら、先生から今日発つことになったって聞かされて吃驚して教室抜け出して来た。」
と、泣き崩れる親友に、
「そういう顔、見たくなかったから、ごめんね・・・」
と、一緒に泣きました。
私が旭川を発った後、彼女は見送りに来て下さった祖母とタクシーで帰ったそうですが、祖母とはひとことも話さずずっと下を向き泣き通しだったそうです。
彼女は35年経った今も勿論、仲良しです。久しぶり会えばこの話ばかりになります。(^^)
ブラジルに無事到着し、現地でもブラジル国内は勿論、ペルーやアルゼンチン等南米をあちこち旅行しましたが、時折盗難に遭ったり行方不明になるスーツケースが多かった中、こちらの祖母に買ってもらいましたボルドー色のスーツケースだけは不思議と失う事なく、いつまでも私の傍にいてくれました。
同棲していたブラジル人の彼と大喧嘩して、怒り狂いながら荷物をこのスーツケースに詰めて彼の家を出たのですが(途中、物凄いスコールに遭ってしまい)、彼が慌てて追いかけてきて、道端で尚、周りもドン引きする程ギャーギャーと大喧嘩した挙句、結局仲直りし、スコールがやむまで雨宿りしつつ、彼がこのびしょ濡れになったスーツケースを持ち、家に戻った事も・・・
辛い事情の為、ブラジルから泣く泣く帰国の時も、このスーツケースひとつでした。
『緋色の三日月』マガジンを読んでくださった方でしたらお分かり頂けるかと思いますが、色々あって千歳空港から東京へ向かう際にもこのスーツケースひとつでした。
アメリカへ引っ越しの際も勿論、当時0歳と2歳だった幼子二人抱え、こちらのスーツケースを持って、元夫の住むシカゴへ向かいました。(今思えば迎えに来てくれたっていいじゃない!って思いますけどね、元夫も、父も)他にもショッキングピンクのスーツケースがあったのですが、それは失ってしまいました。
1999年、アメリカで離婚し、泣きながら幼かった子供達二人を連れ、家を出た時もこのスーツケースを持ち、今の夫のミシガンの家へ子連れで転がり込んだ時にもこのスーツケースを持参していました。
移動の時は必ず私の傍でずっと見守ってくれていますお守りのようなスーツケース、ベルギーへの引っ越しの際にも勿論、持って行きました。 このスーツケースは、私の笑顔、泣き顔、怒り顔、嬉しい顔、全て知っています。
35年前、このスーツケースに出会った際、目を輝かせて喜んだ私を寂しげに見つめていました祖母の表情も思い出します。 おばあちゃん、あらためてありがとう。また、いつかこのスーツケースの出番がやってくる日が来ると思いますが、スーツケースと共に見守っていて下さいね。その前に革紐修理をしなければ、ですね。(^^) 次にこのスーツケースを使うときは、笑顔でありますように☆
いいなと思ったら応援しよう!
