2月 留学報告書
2月になってから学期が変わって時間割が新しくなりました。私の後期の時間割は、Social Media Marketing、Philosophy、History、Art Studioです。
Social Media Marketingでは学校に新しく設置する自販機で販売する商品を決めるためにアンケートやインタビューをして、インスタのアカウントで情報発信をしています。先生は良く言えば情熱的で、話し出すといつまでも話し続けています。週末はDJをするのが楽しみらしく、オーガニック食品が大好きな変わった先生です。
Philosophyの先生はたまに教室にJack(飼い犬)を連れてきます。ポメラニアンです。ソクラテスやプラトンなど有名な哲学者の名言についてみんなで話し合ったり、クラスで討論をしたりします。この前の討論のお題は「オレンジはフルーツかデザートかどちらなのか」でした。教室の向かい合っている壁に、フルーツ派とデザート派で別れて立って討論をし、もし考えが変わったら反対側の壁に行く方式でした。超どうでもいいことについてじっくり考えて自分の意見を言うのは楽しかったです。
Historyでは近代史をやっています。先生は優しい熊のような人です。世界史の中で近代史では日本がたくさん出てきます。意外だったのは江戸幕府の終わりと大政奉還、明治維新、文明開化、富国強兵など、日本で習うのと変わらないくらい詳しく扱われていることです。基本的に先生が前に立って話していますが、生徒がつっこんで発言するシーンもあります。
Art Studioでは鉛筆やチャコールで森の絵を自由に描いています。日本よりもみんなが恥ずかしがらずに絵を描いて友達や先生に見せたり、友達が描き終わったからといって適当なところでやめたりせず、自分が納得いくまで時間をかけて描いています。みんなに人気のホッケー男子のそういう姿を見ると、いつものふざけたモンスターとは全然違うので面白いです。先生はお母さんのような人で、絶対に強要はしないけど的確な提案をしてくれます。
学期が変わるタイミングで、留学生が自分の国に帰って行ったり、新しくカナダに来たりして、自分の周りの人間がかなり入れ替わりました。前回のセメスターよりもかなりやかましい元気な人たちがたくさん来ました。みんな明るくてフレンドリーでイカれていて見ているだけでも楽しいです。日本語の下ネタが大好きなチリ人とドイツ人の男の子たちは、一生懸命翻訳したり調べたりして果敢に私に下ネタを言ってきます。不意に来られるとご飯や飲み物を喉に詰まらせてしまうので要注意です。
2月は今までで一番と言っても過言ではないほどホッケー漬けでした。週に8回氷に乗っていました。でもそのホッケーシーズンももうすぐ終わります。ホッケーがあっても4kg増えたのに、なくなったらどうなってしまうのかと、今から恐れおののいています。幸いなことに家から2番目に近いリンクで3オン3のホッケーリーグがあるそうなので、そこに申し込みをしました。まだどうなるか詳しいことはわかりません。あとは陸上クラブに入りたいと思っています。友達や先生からあらゆる球技、そして水泳を提案されましたが、好きではない、続かないとわかっているものはしません。走ることは大好きで、痩せそうなので陸上でとにかく走りたいです。
最近私がよく観察しているのは、カナディアンの自信、主体性、自己肯定感、幸福度です。私が今住んでいる街はかなり田舎で、人も多いわけではないので、カナダ全体ではまた違う雰囲気のところもあると思いますが、このダンカンという小さな街のことを観察して思ったことがあります。
学校で一番モテるのは金髪に青い目の女の子と、スポーツをやっていてイケメンで背が高くてマッチョの男の子です。とにかく外見がいい人がモテます。日本の同世代だと顔や背よりも面白かったり性格がよかったりする人たちにチャンスがありましたが、カナダの友達と話していても、付き合うとなるとかなり容姿を気にするようです。でもそこまでファッションには気を遣ってないように見えます。カナダの女の子に大人気のブランドARIZIAの、スーパーパフというダウンジャケットを羽織って、ピタッとしたボディースーツにジーンズか、フーディーにlululemonのヨガパンツを履いているか、もしくはスウェットのセットアップにスーパーパフのベストを羽織っています。大袈裟ではなく、本当にその3パターンくらいしか服装のバリエーションがありません。男の子は全員フーディーにジーンズか黒やグレーのスウェットパンツです。年中半袖Tシャツの人も多いです。これがいわゆる一軍と呼ばれる人々です。彼らは一軍としか関わりません。いつも決まった人といて、1人でいることはあまりなく、こちらから話しかけない限りはフレンドリーではありません。みんな何かしらスポーツをやっている傾向にあり、主な放課後、週末の遊び方はドライブかパーティーです。
日本だと一軍の次には二軍が、そして三軍、四軍までありました。本当にくだらないですが確かにありました。一軍がいなければイキイキする二軍の人たちや、一軍の中にもグループがあって喧嘩、トラブルを起こすなど、面倒くさいこともたくさんありました。私はどこにいたかというと、どこにもいませんでした。高校にあまり行かなかった時期もあり、友達はちゃんといましたが学校で誰かとずっと一緒にいることはありませんでした。
カナダの今の高校では、一軍かそれ以外か。という構造です。もしかしたらもっと複雑な層があるのかもしれませんが、私が今のところ見えるのはそれだけです。それ以外の人々がみんな同じようなトーンかというとそうではありません。みんなそれぞれ着ているものや、していることは違います。でも確実に一軍ではないという共通点があります。しかしこの一軍という呼び方が正しいかどうか迷います。なぜならこの一軍の日本とのいちばん大きな違いは、クラスを盛り上げる人は必ずしも一軍の人ではないということだからです。カナダの一軍は日本の一軍と比べて静かでクールに振る舞う傾向にあります。そして一軍ではない人たちが彼らに気を遣ったり、怖がったりしないからです。
日本で私がよく目にしていたのは、他の人と被るのを気にする人たちです。被るのは嫌だけど目立つのも好まないというのがよくある日本の高校生だと思います。誰だれが持ってたからこの服は買わないなど、なんとなく気を遣っている人が多いです。カナダの高校生は、服や髪型、アクセサリーが被っても気にしないようです。彼らは自分が自分であるためにそこまで努力しなくてもいいと知っているように見えます。ありのままでいることが難しいことではないと、直感的に知っているのかもしれません。なりたい自分になるために頑張ることはもちろん悪いことではないけれど、理想の姿ではないからと言って自分や自分の一部を嫌ったり、自信を失ったりすることがいかにくだらないかを知っているのだと思います。
なぜカナダの高校生たちはそれを知っている人が多いのに、日本では自己肯定感が異常なほど低いのが普通なのかと疑問に思います。外見の話にとどまらず、自分で考えた自分の意見を持ち、それを表現することを恐れる日本人はたくさんいます。Philosophyのクラスで、先生が「始め!」と言った瞬間に生徒たちが討論を始めたことに私は感動しました。生徒たちを異なる意見のグループに分けたのは友達グループや顔色の伺い合いではなく、自分がそれについてどう考えるかということだけでした。仲のいい友達同士でも価値観や考え方が違うことは普通です。それでも友達です。周りと違うことを恐れているうちに、意見の持ち方を忘れて不本意に周りの人や環境に流されてしまうのは残念です。
一方で、今通っているカナダの高校の同級生たちは、将来についてあまり期待をしていないようにも見えます。彼らはアメリカに憧れを抱き、同時にアメリカを軽蔑します。将来は仕事について車と家を持って、時々メキシコかハワイに旅行に行って、年をとっていく人生をもう今から見ているようです。物価が高く、土地が広大で、本人の努力だけでできることが日本よりある意味少ないのかもしれません。人生はある年齢になったら退屈になるものだと思っている人が多いです。日本でもそう思っている人はいるかもしれないけれど、私の周りの日本人はいつになっても精一杯人生を楽しもうとしている人がたくさんいるので、カナダで出会った同い年たちにはもっと多くを望んでもいいのにと思ってしまうことがあります。
ティーンの時期の過ごし方と将来の見据え方が、カナダと日本で似ていたり違ったりしていて、観察するのはとても楽しいです。文化や歴史、今日の経済が人々の思考にどう影響するのかを見ることができています。どちらが絶対に正しいわけでもなく、メリットとデメリットが見えるから考えさせられます。自分が重きを置きたいのは一体何なのか。自分にとって幸せだと言える状況はどういうことなのかを考えました。私は退屈な人生は嫌です。だけど望みすぎて現実にがっかりすることもしたくありません。成長し続けられる環境に身を置いて、誰かに求められ、同時に誰かのことを求め続けることが私にとっての幸せだと、今のところは思います。誰しも他人から求められることで幸せや満足を得ることはありますが、私は他人を求めることもかなり必要な人間のようです。エネルギーを費やすターゲットが必要なのです。新しい人と出会って世界を広げることも、昔から自分を知っている人と時々会って話して一緒にご飯を食べることも大好きです。その中で服装や生活、考え方が変わって、昔の自分と少し変わったときに、ありのままの自分を自分で受け止めて、しっかり好きでいたいです。
私は自分のことを好きでいるつもりでいて、他人の言うことは気にしないと思っていても、傷つくこともあります。価値観が違うということは本当に大きな違いです。カナダで日本人以外の友達とそういうことがあると、「この人たちは道徳の心のノートを読んでないから仕方ない」と、冗談まじりに自分に言い聞かせてどうにか自分を落ち着かせています。
バレンタインデーはホストファミリーからお菓子をもらってハッピーでしたが、最近何もロマンティックなことがないので困ってしまいます。3月はロッキーマウンテンに行く旅行があるし、気候ももう少し暖かくなるはずなので、気合いを入れて自分から出会いにいこうと思います。
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