【#fetishism31】Day14 : 濡 / Wet
雨の日に、誰も居ないバス停で雨に濡れた美少年を見かけたら、声をかけてはいけない。彼は女の人を食べるのが趣味なのだ。
ある田舎町の田んぼの真ん中にあるバス停は、一時間に一本しかバスが来ない。さらに雨が降ると、三十分は遅れてやってくる。それでも、三時間以上歩いて町まで帰るよりは、雨の中バスをおとなしく待った方が効率がいいのだ。
女がバス停に入ったとき、少年が一人椅子に腰かけていて、彼は上から下までずぶ濡れだった。その手には傘を持っておらず、この大雨にやられてしまったのだということが一目でわかる。少年はこの近くの山の上の高校の制服を着ていたが、こちらを見ることもなく微動だにせず、言葉も発さない。けれどその濡れた髪からのぞく顔がひどく端正で、女は驚いてしまう。こんな美しい男の子が、この町にいただろうか?
女には決して他人には言えない性癖があった。少年が好きなのだ。年端もいかない、中学生から高校生くらいの男の子にどうしようもない性的魅力を感じてしまう。そのためこの町の男の子についてはよく調べていたが、こんなにも美しい少年のことは聞いたことがなかった。女は思わず、彼を凝視する。美しい黒髪に、真っ白な肌と、筆のような厚みのある睫毛から、水滴が滴っている。女は生唾を飲み下した。人気のない田んぼの真ん中のバス停、バスが来る気配はない。雨に濡れた美少年と二人。拙なる欲求を果たすために、彼女は傘を置いて、彼に声をかけた。
「随分びしょ濡れね。風邪をひいてしまうわよ」
彼は答えない。女を見ようともしなかった。
「このタオル、予備のものだから、良かったらどうぞ」
「雨が降るとサァ」
突然、少年が話し出した。女は少し驚いたが、その澄んだ声に耳をすます。雨にとけ入りそうな、凛とした響きの声色だった。
「妖怪が出るんだってね」
彼の言葉に女は何も答えられない。すると少年はこちらに顔を向け、更に続けた。
「そいつは、上から下までびっしょり濡れてるんだってさ」
彼は美しい顔に微笑みを浮かべていた。女はその美しさに思わず呆けてしまう。すると彼は女の手から「ありがとう」とタオルを取って、その制服の前ボタンをはだけた。雨は彼のピンク色のインナーまでをびっしょりと濡らしていた。女は彼が髪を絞って首筋にタオルを這わす仕草を熱視しながら、彼の不思議な言葉に答える。
「それってどんな妖怪なの?」
透けた身体を見ていた女が少年を見つめると、目が合う。視線が絡み合った。
「女の人を食べちゃうんだ」
彼は女を捕らえるような目つきで見ていた。女はその美しさや若さに身体が火照るのを感じた。
「どんなふうに?」
少年は、女のスカートの中に不躾に両手を入れ、ゆっくりと下着を下ろす。彼は放蕩のため息をつく女を見て、にこりと笑い、足の間に右手を差し入れる。
「こんなふうに」
雨音の中に、女の貝が蠢く水音が紛れ込む。中心を少年の美しい指で嬲られ、その甘美さに首を反らす。
「お姉さんも濡れてる」
耳元で彼の濡れた声がすると同時に、彼の口が傘よりも大きく開いて、女は頭を砕かれた。バキバキ、バリバリ、と骨を砕く音も、嬌声と共に雨の中に溶けていく。
雨の日に、誰も居ないバス停で雨に濡れた美少年を見かけたら、声をかけてはいけない。彼は女の人を食べるのが趣味なのだ。
(了)
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