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初めて知る世界へのドキドキと、
先週、友人の菊池さんから「和ろうそく職人さんとおしゃべりする会」に誘われた。
以前ツイッターで和ろうそく職人である大西さんのnoteをシェアされていて、ずっと気になっていたので一言返事で参加した。(超前のめりだったと思う。笑)
少し遅めの21時から。オンラインには30名を超える人が集まり、大西さんの話に耳を傾けた。
サステナブルな灯り
当日までの間、菊池さんはイベントページにさまざまな、大西さんの情報を載せてくれた。そのおかげで、参加前には和ろうそくとは何かの片鱗がつかめたように思う。
和ろうそくとは、日本で採れる櫨(はぜ)や漆、米ぬかなどを使ったろうそくを指す。わたしたちの知るろうそくとは違い、芯が太い。なんと和紙や和紙に灯心草と呼ばれる草の茎を巻いて作られる。溶けた蝋を吸い上げるためには、太い芯が必要なのだという。
大西さんは、櫨の木の実からとれる蝋を使った「櫨ろうそく」を主に作っている。櫨ろうそくを作れるのは、日本でも数えるくらいしかいない。
大西さんは和ろうそくはサステナブルである、と言っていた。地面よりも上でとれるもの。櫨は手入れさえきちんと行えば、毎年ちゃんと実をつけてくれる。石油と違い、枯れることなく、毎年和ろうそくを作ることができるのだ。
SDGsが注目を浴び、エコなもの、環境にいいもの、オーガニックなもの…そんな風に消費者の考えは少しずつ変わっているが、知らないことには意味がない。実際にわたしは、この会に参加するまで櫨ろうそくの存在を知らなかった。
終わりを意識する灯
前に『世界はほしいもので溢れてる』というNHKの番組で、デンマークのHyggeを取り扱った回を見た。番組の中でバイヤーが「日本は明るすぎる」と言っていたのが印象的だった。デンマークの人々は、日が傾き始めたらすぐ電気をつけるのではなく、窓際から少しずつキャンドルの火を灯す。太陽が沈み月が顔を出す、そんな移ろいを感じながら、灯りを楽しむ彼らの姿を見て、「わたしも灯りを楽しみたい」と思った。
それからキャンドルを灯すことが、ささやかな日常の楽しみになった。
けれど大西さんの会では、こんな話があった。
「火の終わりを意識できるのはろうそくだけ」
火の終わり?なんのことだろう。俄然興味がでて、早速櫨のろうそくをポチった。
(なんでこんな写真しかないんだって感じだが、この短さになるまで「火が大きい…!」「かすかにパチって音が鳴った!」「火の揺れって美しいよね…」といったように、初めての櫨ろうそくに浮かれていた。)
溶けた蝋は瞬く間に芯が吸い上げ、火の燃料になる。わたしが知るろうそくは溶けた蝋がたれるのに、このろうそくはどうやらそんなことはないらしい。驚くことに、本当に最後の最後まで楽しめた。
キャンドルは溶けた蝋で火が消えて終わるが、櫨ろうそくは蝋がなくなる最後の瞬間までその火を絶やさなかった。火が消えても赤い火の粉のようなものがキラキラと芯を駆け抜ける。余韻がすごい。夏の花火の終わり、線香花火を楽しむそれと似ていた。少しだけ、切なさが残る。
だって、知っちゃったんだもん。
この会の大きなテーマはこれだと思う。わたしたちは今回、大西さんを通して和ろうそくの厳しい現状を知った。今のままだと、和ろうそくはわたしたちの生活から消えてしまう。だからこそ大西さんは思考を巡らせる。照明から宗教用具へ移行したろうそくの、これからを自分に問いている。
でも、それだけじゃない。わたしたちは同じように、和ろうそくの魅力やこれからの可能性についても知ることができた。この会が終わってからたくさんの参加者が和ろうそくを購入し、自分の生活に取り入れている。
大西さんのスライドの一枚。これをうけ、参加者の多くは「お風呂でろうそく灯したい!」とチャットで盛り上がった。
メッセージグループにはたくさんの感想の声が飛び交い、中にはお子さんが気に入って、食後にろうそくを灯すのが日課になった人もいる。
丁寧なくらしとか、伝統工芸がなんたるかとか、そういったことではない。たぶん、知るからこそ、わたしたちはそこから何かしらを受け取り、自分の生活を彩ったり、装ったりする。
自分が身につけるものや使っているものって、ある意味で自己紹介だと思う。自分はどんなものに心が動き、どんなものを美しいと思うのか。どんなものが心地よいのか。
そして、何とともに生きていきたいのか。まあ、すべての買い物にそこまで考える必要はないと思うが、自分が大切にしたいもの、残したいものに対しては、買うという行為は応援につながる。「わたしはこんな未来がほしいんだ」という投票になる。
だって、知っちゃったんだもん。じゃあ、その先、どうする?
大西さんから、そんな問いをいただいたような気がする。
ちなみに大西さんがイベント後に書いたnoteはこちら。
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菊池さん、すてきな会を開いてくれてありがとうございました!
イベント前や後のやりとりを見て、本当に丁寧につくり、参加者と向き合っている姿を見て、私自身もとっても勉強させてもらいました!ゆっくりお話できるのを、というより、滋賀で会えることを、楽しみにしています☺
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