UNESCO オンラインディベート 「文化とコロナウイルス~アートの力を考える」
ResiliArt Japan
昨晩、ユネスコのオンラインディベートがFacebookでライブ配信されていました。約700人もの人が視聴。
パネリストのMIYAVIさんの存在を初めて知りましたが、建設的かつわかりやすい話し方でしたし、何より行動力が凄まじかった。
オンラインが流行ってるけど、今後どうなる?
コンサートやライブが軒並み中止・延期となり、劇場がほとんど稼働していません。
オーケストラの演奏会などはよくて現状7月の公演で開催される予定の物がありますが、演劇やオペラ・バレエのように稽古期間が長いものは8月まで公演が全くできないようです。12月の公演も中止が考えられているとか…。
私も大好きなオケでの活動が全くできない今、オンラインでのアンサンブルや多重録音をやってみたり、オーケストラや劇場のアーカイブ配信を観たりしていますが、やはり生の感動や鑑賞後に周りの人と共有する幸せに勝るものは無いなと思ってしまいます。楽しみとして捉える軸が違うので一概には言えませんが、みなさんはどうですか?私はそろそろ生の感動が欲しくなってきました。つらい。
平田オリザさんやMIYAVIさんは、ネットの世界・生の世界の二極化になるのではとのこと。スポーツの世界ではEスポーツがアツいですよね。私達がオンライン授業を受けて、「この授業はオンラインがいいけど、やっぱこの授業はリアルで会ったほうがいいな」と思うように、バーチャルで活きる音楽芸術ジャンルと、やっぱり生が活きるものとが更に認知されていくのではないでしょうか。二極化するとはいってももちろん、その中で新しい感覚の物が生まれ、淘汰されながら発展していくと思います。
東京にいなくてもいいんじゃ??
日本は、東京に異様なほど劇場やコンサートホールなど文化の拠点が密集しているので、「東京に来ればいろんな音楽芸術に触れられる!」のは今後も変わらないと思います。しかしその考えを除けば、実際に活動は地方にいてもリモートできるし、その地域でもできることや始められることはあります。
今後は地方がより力をつけられるのではと河瀬さんは仰っていました。
文化庁も2022年には京都に移転しますし、東京の一極集中に対する改善事業がさらにスピードにのるかもしれません。私も地方出身者として、若者の県外流出が減少して地元が活性化されるのは非常に嬉しいです。とはいっても、まだ首都圏にいたい...いつか地域に何かしらの形で貢献したいです。
日本と海外の支援制度・政策の違い
日本ではいくつかの芸術家支援制度が行われているにも関わらず、まだ足りていない状況のようです。実際、プロのオーケストラは財政難に直面しており、SNSで支援を呼び掛けたりクラウドファンディングを行い、なんとか存続しようと頑張っています。個人で活動する音楽家・芸術家も然り。
「その点欧米は支援が充実しているよね」と思いがちですが、そもそもそれ以前の問題で、日本のシステム自体が今の状況を作ってしまっているとのこと。
普段の日本の文化芸術への支援は他の先進国の4分の1。
また、その支援も単年度制なので、「その期間内で何とか製作する」意識になってしまうそう。ヨーロッパのある国では4年とかそれ以上の期間があり、じっくり研究や製作ができます。
フランスなどははっきりとした制度があったおかげで、そんなにアーティスト達は金銭面で影響を受けていない様です。その理由として、然るべき学位を持っていたり、職場や劇団での一定の就業時間が認定されると、有給がしっかり取得できるシステムがあることが挙げられます。支援を受けるまでにふるいにかけられることはもちろんありますが、優秀な芸術家が金銭の問題で他分野にシフトチェンジして国益を損なわないシステムだと言えます。
その分日本には、競争に伴う淘汰を嫌い、みんな平等がいいという感覚がなんとなくあるようです。だから個人への支援ではなく、しっかりした継続性のある未来が見える団体に支援がいきがちです。もちろん鋭い感性を持っている方々もいますよ!
韓国も凄いようです。まず芸術家福祉法がきちんと整備されています。現在はGDPも高いし、学校教育が充実してしています。例えば演劇ですが、多くの大学にそのような学部が併設され、演劇古典から作法も学べるようです。ここで韓流ドラマや韓国俳優が多く育成されるということですね!韓国の映画、ドラマ、アイドルなど、コンテンツの輸出力もすごい。それが国策としてがっつりサポートされています。
日本がアジアの中で地盤沈下している。と平田オリザさんは仰っていました。
声を上げ始めた芸能人・アーティストたち
音楽や芸術には、ジャンルによっては社会に対して主張をする要素があります。ロックは特にそう。欧米ではアーティストやセレブリティが先陣を切って政府に対して主張をする文化?があります。日本では、国民性や所属しているところの意向に従う風潮などから、なかなかはっきりと主張できない面があるようです。しかし最近は、独立した芸能人達が次々に声を上げ始めました。
星野源さんの「みんなで踊ろう」投稿による、アーティストのニュートラルな立場をとることに対する是非もよく考えさせられます。これまでの様々なシステムや概念が渦を巻いて変わってきています。
より主張ができるように時代が変化する中、先述の日本の芸術文化支援システムも今後変わるのではないでしょうか。
今回のパネリストさんたちのように、国を動かす力のある人々の行動も非常に大きな原動力となると思います。
別所さんが、「もし仮にオリンピックができなくなったらその時こそ河瀬さんが中心となって何かプロジェクトをやって、日本をさらに発信すべき!」(もちろん今は開催される予定だし、現行の関連文化プロジェクトに関わっていらっしゃいます。)と仰っていて、河瀬さんにも注目したいと思いました。
いろんな分野で研究や実践が進んでいる
私が全然知らないだけで、世界中の人がいろんな分野で前に進むために頑張っています。今回のオンラインディベートもゼミの先生が教えてくれましたし、日々新たな情報が湧き出てきます。知らないことだらけですね。
脱線しますが、ポピュラー音楽の現状に興味のある方はこちら。メディア運営論の先生が教えてくれました。めちゃ勉強になります。
以上のほかにも、2時間たっぷりと様々なトピックについて討議されていました。
最後のコメントとして仰った以下のことに大変共感しました。
平田オリザさん:人々の想像力を育むのは芸術。関係ないと思っている人でも文化芸術の恩恵を何かしら受けている。個々の異なる生き甲斐を尊重し、その多様性を大切に、世界から様々なものを受け入れつつ発信していくべき。
MIYAVIさん:人の価値・人のつながり・アートの価値を見直し、再構築していくことが必要。コアは変わらず、側がかわってく。みんなで声を届けていく。
別所哲也さん:世界やコミュニティが一つになること必要。
河瀬直美さん:アーティスト達が政府に届けるのも大切だけど、ユネスコという国際的な立場からの提案も必要。
今回のディベートは非常に貴重な機会でしたし、今この時代の変化の途中に立てているのも大変貴重だと思いました。
今後もいろいろ吸収して考えていければと思います。