重松清『小学五年生』と転校した息子の親友
重松清さんと言えば、家族や日常をテーマにした心温まる小説でよく知られており、小学校の教科書や、図書館等でほぼ必ず紹介されている作家さんである。
『小学五年生』という小説は、短編で、小学五年生のいろいろな「ぼく」の視点で描かれた日常を描いた短編だ。その中に転校生の話があった。転校して親友と離れて主人公の僕は次会う日を心待ちにしていたのに相手はそうではなかった。他の友人との約束を優先しようとする元親友は新しい日常を生きている。それを痛感して自分も新しい日常を生きていくことを決めるという切ないお話だったように思う。
友達との距離感って難しい。自分が大事と思っている友達との時間を蔑ろにされてしまうと人は傷つく。人との付き合いは賞味期限というものがあるから距離が離れると気持ちの賞味期限も短くなるのだろう。
さて、実は私の息子も現在、小学五年生であり、転校した身である。 二年生から一緒の少年団でサッカーをしていたメンバーの一人が彼の親友だ。四年生の時に急に仲良くなった。
練習の日も試合の日もまるで恋人のごとく一緒の時間を過ごし、2人いつも一緒にいた。そんな中で急遽関東から関西への転勤が決まったのだった。
転校してもうすぐ1年たつ。
そしてこの三連休は、その親友に会いに行ってきたのだ。
もしかしたら「あの小説のように 相手の子には新しい親友ができているかもしれない」
むしろその可能性のほうが高い。
お互い新しい日常を精一杯生きて一年間過ごしてきたのだから。
母親の心配をよそに息子は友達に会いに行ける喜びでいっぱいになっていた。
傷つかないといいな。そんなことを思いながら出発した。
結果は、
本当にうれしそうな二人の最高の笑顔だった。
そして息子からはこんな一言が聞けた。
「友達を大切にしてくれる友達と出会えてよかった。」
「これからもずっと友達でいようね。」なんて言っておきながら連絡を取らなくなったりすることはよくあることだし、これから先もずっと友達でいられる保証はないけど、お互いが会いたいと思えるうちは、友情を大切に育てていけたらいいなと思う。
そして、もてなしてくれた友達とその家族にも涙が出るほど感謝するのである。
息子を大事にしてくれる他人って本当に奇跡だと思うから。
最高の三連休だった。