⑥Happy Holidays from New York

(この記事は2006年1月5日に書かれたものです)

アメリカのクリスマス
アメリカのクリスマスはなんとなく日本のお正月に似ています。家族が集まって食事をしてこの1年が無事に過ごせたことに感謝し、プレゼントを交換し合う・・・。日本でのクリスマスは何故かカップルで過ごすという色彩が強くなっていますが、アメリカではそんな感じではありません。そのため25日のクリスマス当日、街は静かで人や車もまばら。レストランも店も多くが休んでしまいます。ここマンハッタンの中心地タイムズスクエアでもそうでした。特に昼間はほとんど人がいませんでした。(こんなとき「うーん、何かロケをするのには便利な日だな」って思ってしまうのは職業病かもしれませんね)

ニューヨークでストライキ!
そんなクリスマスを控えた先週、ニューヨークでは公共交通の大規模なストライキがありました。25年ぶりというストライキです。マンハッタンと周辺の地域を結ぶ地下鉄がすべてストップです。これは大変なことでした。ニューヨーク市が考えたのは交通規制でした。実はマンハッタンは島なのです。(意外と知らない人も多いようですが、マンハッタンは周りを川に囲まれています)つまりマンハッタンの周辺、ブロンクスやクイーンズ、ブルックリンなどから来るには橋を渡らなければなりません。ニューヨーク市は混乱を避けるため、その橋の入り口で車の入りを規制しました。1台の車に4人以上、人が乗っていなければマンハッタンへの橋には入れないというもの。もともとアメリカではカープールという制度(人々が車に乗り合って通勤すること)が浸透していたので、知り合いはもちろん、知らない人でも誘いあって車で通勤するということには抵抗がなかったようです。

労使交渉
ストライキが決行されれば25年ぶりという歴史的なニュースに対応すべく、私たちも労使交渉の行方を見守っていました。労使交渉の期限の12月20日の午前零時。ニューヨークのテレビ各局は労使交渉をしているホテルから一斉に生中継で放送していました。「交渉に進展は見られないもののストライキを決行するかどうかは協議中・・」ということで、その後、協議はもつれ込み・・・結果が出たのは午前3時。お陰でこちらは寝不足気味です。早速私も歩いて出社しました。この日はかなり冷え込んでいて、氷点下5度だったので歩くとその寒さが骨の芯まで、耳の鼓膜まで、目の裏側まで響くようでした。それでも早朝からニューヨーカーたちは歩きに歩いて、周辺の橋には歩く人の波・・・。それでもストライキ初日はなんとなくお祭りムードもあり、歩く人の顔に悲痛感はあまりみられませんでした。

ストライキ3日目 怒り心頭
しかしストライキも3日目に入りさすがに歩け歩け大会ばりだったニューヨーカーにも疲れと怒りの声が強まっていきました。交通規制もありましたが、それでも車は終日大混雑でマンハッタン内の車事情は最悪でした。取材に出るにもどこに行くにも不便極まりない・・・。タクシーもいきなり強気の商売をはじめる始末。(もともとニューヨークのタクシーは愛想もなくサービスも最低なのですが、この時はそれに「ぼったくる」ということまで加わってしまったのです)タクシーは乗り合いOKとなったのを良いことに、ゾーン制での料金システムに変わり、ちょっと走っただけで私たちは10ドル、20ドルを請求される羽目に。ニューヨーカーの怒りはピークに達していました。これを受け裁判所も動きだしました。実は25年前のストライキの後、「公共施設がストライキをする場合は地裁の判断で罰金を科す」という法改正がなされました。これをニューヨークの地裁が持ち出したのです。1日1億円の罰金を支払うよう組合側に命じました。さらに会社側も「ストライキを解除しなければ交渉には応じない」という姿勢を打ち出し(ストライキに対するストライキみたいですが・・)組合側は苦しい立場に追い込まれました。結果、ストライキは3日目にして組合側が解除を決めました。労使交渉は何も進展をみずに。何のためのストライキだったのか・・・。誰も何も勝ち取ることもなくストライキは終わりました。(一番得したのはタクシーやハイヤー、民間のバス会社ですかね・・あとはスターバックス?)。

経済損失
今回のストライキでは交通規制があったため、物流網などはマヒ状態。配送のトラックがマンハッタンに入れずレストランは一時閉鎖となったり、デリ(日本のコンビニエンスストアみたいな店)にはモノが不足したり・・。人の命にかかわることでは輸血用の血液の輸送ができず一時は血液不足にも陥りました。会社も一部自宅待機になるところがあったり学校も2時間遅れでスタートしたり、ブロードウェイに足を運ぶ人が減ったりなどなど、上げればきりがありません。初日の経済損失は4億ドル、470億円にも達したとみられ、3日間のストライキでは1000億円規模の損失だったといわれています。今回のストライキによって個人も企業も多額の損失を被ったわけですが、その損失は誰かがカバーしてくれるわけでもなく、リスクマネージメントが必要だと痛感しました。もしもこうした大規模なストライキが東京で起こったら?・・ちょっと考えてしまいますね。ストライキに限らず、大停電や大地震が起こるかもしれません。そんな時東京ではどう対応するのだろうか・・? 企業も個人も即座に対応できるか・・対応策を考えておく必要があるようです。

ニューヨークのクリスマス
結局そんなこんなのどたばたも、クリスマス直前の23日はやっと解除され街にはいつもの活気が・・・と思いきやアメリカ人はみんな休暇に入っていました。(働いていたのは私たちだけだったりする・・)ストライキによってクリスマス商戦もマンハッタン内では多少影響があったようですが、全体の消費には大きな影響はなかったようです。人々は単にマンハッタンで買い物をせず郊外に場所を変えただけ、ということらしいです。こうして今年のクリスマスはやってきました。ストライキ&クリスマス、これはきっと一生忘れないでしょう。

2006年1月5日 https://plaza.rakuten.co.jp/ismaririn/diary/200512120000/

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