⑤日本株ブームは本物?

(この記事は2005年12月12日に書かれたものです)

いよいよ師走に入り何かと慌ただしくなってきましたね。こちらアメリカでは日本の忘年会ならぬクリスマスパーティーが頻繁に開催されています。大使館関連などのフォーマルなパーティーから友人たちと集まるカジュアルなものまで色々です。

 そのパーティーの場で最近よく「日本のマーケットはすごいみたいだね」と言われるようになりました。確かにマーケット専門番組CNBCでも連日のように「日本のマーケットは買いか?」という特集を組んでいます。私がニューヨークに赴任してきて初めて見る現象です。それほど日本のマーケットに注目が集まっているのですね。ただ、ちょっと残念なのはBRIC`s(ブラジル、ロシア、インド、中国のいわゆる新興市場)と比較されていたりして専門家が「いやー、ロシアよりは経済的に安定していると思いますよ」なんて言っていたりします。それを聞くと日本って新興市場かしら?って思ってしまったりします。

 とにもかくにも日本の株式相場の上昇がここアメリカで話題になっているのは事実なわけで、このパーティーシーズンを利用して色々な人たち、マーケット関係者、日本通の人、そうでない人も含めて今の日本株について聞いてみました。日本株に対して強気は6割、弱気は4割ぐらいといったところでしょうか?ファンドマネージャーやディーラーなど日々トレーディングに携わっているような人は比較的強気派が多いようです。一方、日本を文化、経済、政治ともによく知っている‘日本通‘の人ほど懐疑的なのは興味深いことでした。

 強気派の見方ははっきりしています。とにかく「景気回復」です。それでみた場合、日本株はまだ「割安」だというのです。「金融システムの安定化」と「M&Aによる市場活性化」にも期待する声がありました。

 弱気派の見方は「今の上昇はバブル」と見ている人が多く、銘柄選択をせずにただ乗り遅れまいと焦って買いに走っているに過ぎない、というのです。確かにこちらの機関投資家の間では「日本株を持たざるリスク」というような話を聞きます。ヘッジファンドの一部はすでに売りを仕込んでいる、との話も聞きました。「日本株が息切れするその瞬間を狙うんだ」とあるディーラーは言っていました。他には個人投資家がどこまで広がりをみせているのかを指摘する声もありました。

 私も日本にいないため、今回の日本株の上昇局面を一歩引いて見られるような気がします。アメリカの投資家もきっとそういうスタンスで見られるのかもしれませんね。投資にはちょっと距離を置いて冷静に判断する、ということが必要かもしれません。その上での冷静な銘柄選択が重要となってくるのです。つまり企業の世界的な競争力、収益力、利益率を他社と比較して認識し投資する、というのがとっても大切なのです。この銘柄が上がっているから、同業のこの銘柄もいずれ上がるだろう、ではなくやはりその銘柄のファンダメンタルズありきなんだと思います。とは言ってもそのファンダメンタルズを正しく判断するのもまた難しいことなのですが・・・。

 とにかくここアメリカでも日本の銘柄を研究し尽くしている人たちは結構いて、私の知らない企業を知っているようなアメリカの投資家がいます。そうした人たちが日本のマーケットに厚みを持たせているのかもしれませんが、一方でかなりしたたかです。個人投資家であったとしても、結局こうしたアメリカの機関投資家などとも対等に投資合戦を繰り広げているわけで、それに対抗していくには常に冷静な判断が求められるというものです。投資の規模は違っても実は投資ルールにそんなに違いは無かったりもします。

 上がっても相場、下がっても相場。日本でもアメリカでも投資に対する投資家のスタイルはそんなに違いはないということに最近気づいたのでした。

2005年12月12日 https://plaza.rakuten.co.jp/ismaririn/diary/200511280000/

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