⑨北米自動車ショー その2
(写真は日産の新車ブース この記事は2006年4月1日に書かれたものです)
北米の自動車ショーが今年1月、デトロイトで開かれましたが(前回のコラムをご参照ください)不振を極めるアメリカメーカーとは対照的に日本メーカーは絶好調でした。派手な演出はありませんでしたが、そこには販売増加に裏付けられた業績の拡大がありました。ハイブリッド車でアメリカメーカーの先を行くその技術力は素人目にみても明らかに「進んでいる」と思わせるものがありました。アメリカの消費者ニーズについても、より的確にしかも迅速に対応している、そこに勝因があるのです。自分が日本人だから、ということでヒイキ目があるのかもしれませんが、しかし単純に車をみても技術力がにじみ出ていて日米の格差は大きいような気がしましたね。ただ、前回のコラムにも書いたように、アメリカメーカーの車には古き良きアメリカがにじみ出ている車種もあり、何かしらロマンのようなものを感じたのも事実です。
日本メーカーの新車発表の会見はいたってシンプルでした。(クライスラーとは大違い!) ここでも演出重視のアメリカに対して堅実で真面目な日本メーカーという具合に対照的でした。しかも日本メーカーの会見はとても短く、ささっと紹介して「あとは自由に車をご覧ください」という感じ。車に自信があります、というような雰囲気が漂っていました。実際、車にはかなりの自信があるのだと思いますが・・・。
実際、デトロイトの街を走っているとアメリカ車の比率は確かにニューヨークよりは多かったのですが、それでも意外と日本車が多いな、という印象でした。デトロイトの人も日本車に乗るんだーというのが実感。やっぱり良いと思えば乗るんですね。アメリカメーカーがとても苦戦していますが、それでもデトロイトの地ではそれほど悲壮感は感じられませんでした。なんだかんだ言ってもGMはやはり世界のトップですし、いくらトヨタがシェアを伸ばしているといってもGMを追い抜くほどではありませんからね。トヨタも幹部は「GMを追い抜くなんて・・・まだまだ無いですね」と即答でした。(謙遜も入っているのだとは思いますが)確かにアメリカ人はやっぱり大きめの車、例えばピックアップトラックのような車が大好きなんです。それは地方に行けば行くほどその傾向は強いのです。
実は私たちもデトロイトの自動車ショーでは移動にレンタカーを借りたのですが、GMグループのシボレー「タホ」という結構大きめのSUVを借りました。「タホ」は3万ドル(350万円)以上の価格でSUVの中でも比較的高級路線の車です。乗ってみるととても安定感があってアメリカの荒野を走るのにはぴったりでした。アメリカの地方の人たちがあのような車を好むのがなんとなくわかるような気がしました。
いま、アメリカではガソリン価格の高騰を受け、燃費の良い小型車が人気。そういう意味では日本メーカーには追い風なのです。日本はやっぱり小型車が得意ですからね。今回の自動車ショーでは各社とも小型車の強化が共通テーマでした。トヨタは日本の「ヴィッツ」と同車種を「ヤリス」というブランドで投入することを発表。日産も「ティーダ」を「ヴァーサ」という名前に変えて投入すると発表し、同様にホンダも「フィット」を発表しました。日本ではもうおなじみのいずれの車たちですが、アメリカではどこまで受け入れられるのか・・・?今年の日本メーカーの業績を大きく左右することになりそうです。
一方、日本メーカーの高級車も人気があります。これは全米的に好景気だということがまた追い風なのです。特に人気なのは「レクサス」。ちょっとインテリ心をくすぐるようなそのブランド戦略は見事と言えます。ニューヨークなど大都市では「レクサス」に乗ることがちょっとしたステータスになっているようです。「レクサス」のハイブリッドは乗る人に優越感を与えるのかもしれません。これは「トヨタ」というイメージとはまたちょっと違うようです。
以前のような貿易摩擦的な日本バッシングは今のところありません。それというのも日本メーカーは工場をアメリカに持ち、多くの雇用を生み出し、逆にアメリカには無くてはならないものになってきているからです。そこをたたいたところで困るのはアメリカ人、ということになってしまいますね。なので日本メーカーを責めるような論調は今のところありません。こちらの新聞やテレビなどのメディアも「今のアメリカメーカーに足りないのはアメリカ国民の支持を得られる人気車を投入できないことだ」と明言しています。決して実力がないわけではないアメリカメーカー、近いうちにその底力を見せてくれるでしょう。(たぶん・・)
2006年4月1日 https://plaza.rakuten.co.jp/ismaririn/diary/200602150000/