
愛と忘却の日々(燃え殻)
何年か前、仕事の悩みを美容師さんに話すと、凄く当たる占い師がいるから聞いてみればと言われたことがある。
占いは嫌いじゃないけどちょっと怖い。それは電話占いで、思い切ってお願いすると、
「あなたは感謝が足りないのよ。不平不満ばかり言ってちゃ駄目」と、占いというよりお説教を聞くことなった。
今は仕事をしていないので、それ程大きな悩みは無くなった。それでも、単純な日々にだって喜怒哀楽は絶えない。なかなか気持ちが晴れない日もある。私はきっと感謝が足りないんだ、あの占いは当たってたかも、なんてモヤモヤしてみたりする。
そんな夜、燃え殻さんの『愛と忘却の日々』を開く。この本は、週刊新潮の連載エッセイの二年分をまとめたもの。週刊誌で読むのはなかなか出来なくて、私はこうやって書籍になるのを楽しみに待っている。
一晩に一つのエッセイを読む。著者の身の回りの出来事や思い出。ちょっと面白くてちょっと沁みる。モヤモヤが一つ消える。スッキリする。すぐに眠れる。ありがたい。
「立派」に囲まれていると、たまに雑味にまみれたくなる。「立派」は正しくて疲れる。
相性が合うとは、「欠点が一緒」ということなのかもしれない、
世の中はどんどん便利になっていく。別れを惜しんでも、すぐに連絡が取れる。それでも人間はちゃんと面倒くさくて、ちゃんと誰かと繋がりたくて、今日も生きている。
「立派」も「正しい」も「感謝」も素晴らしい。
素晴らしいけれど、それって誰が決めるのかな。立派ってどういうことなのか、本当に正しいのか、 ちゃんと感謝出来てるのか、キリがない。
ソコソコで良いんじゃないかな。
どうでも良いことを気にしたり、忘れたり、笑われたり迷惑かけたり、人は面倒くさくて良いんじゃないかな。
どこを読んでもこの本の中は愛でいっぱい。それは愛じゃないと言われても、私はそういう愛が好き。