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花火と残響(ササキアイ)

そりゃそうでしょう、本になって当たり前でしょう、と思わず声に出してしまった。
ササキアイ『花火と残響』。

アイさんの文章が初めてTwitter(X)の「おすすめ」に流れてきたとき、100文字ほどの呟きが自分の琴線に触れて、うわあ…と固まってしまった。
SNSの文章が好みで気になった人は大抵エッセイを書いていらして、リンクから読みに行くと、益々好きになった。

彼女の文章はわかりやすく比喩も素敵で締めがスッキリしている。
内容も落ち着いていて少し辛辣で好み。

ある日の呟きに、何者にもなれなかった自分のモヤモヤな気持ちを書いていらした。慌しく過ぎた人生の残りをどう生きようかという岐路に立ったときの希望や焦燥。私もアイさんの年齢の頃、一番それを感じていた。彼女の言葉は、時に、自分の表現できない感情も代弁してくれる。

そんなエッセイ達が2023年『フリーズドライ』というZINEになった。
文章はもちろん写真もタイトルも装丁にも彼女の魅力が凝縮されている。たくさん用意された本は瞬く間に完売したそうだ。彼女のファンの多さを改めて知ることが出来た。

そして、2024年に待望のエッセイ集『花火と残響』が出版された。
きっと、誰もの心の中に仕舞われている「あの日」。
記憶の中の曖昧な断片が蘇るたび胸が熱くなってしまう「あの時」。
あの光、あの声、あの街、あの横顔、あの憂鬱、あの悔しさ、あの温もり…。
綴られるご自身の記憶の中に、読む人達それぞれの「あの日」を鮮やかに再現させる26編。
原倫子さんの装画とアイさんの写真、装丁も洗練されていながらどこか懐かしく。

どうやら今年も新しい作品が生まれる気配。楽しみに待っています。
あの希望や焦燥を燃やしながら、これからも順風をたくさん味方につけ、逆風など物ともせずお進みください。

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