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マンガぼけ日和(矢部太郎)

ああ、父が生きているうちに読みたかったなと思った。
そうしたらもう少しお互いに気持ちが楽だっただろうな。

72才で妻(私の母)を亡くして、父は少しずつ認知症が進んでいった。このマンガに描かれているとおりだった。そんな父の姿を見て、この人を連れて消えてしまいたいと何度も考えた。
そんなこと、思わなくて良かったのに。

施設に連れて行くまでの5年間が苦しかったな。
施設に慣れるととても穏やかになって、絶えずニコニコと笑っていた。職員の方々はさすが介護のプロだ。
「だけど、自分の親にはこんなに優しくできないんですよ。つい、苛々してしまって。」
そう仰っていたっけ。

最期の看取りの考え方も同じだったので、余計にこの本に寄り添えた。父は施設から救急で病院に運ばれたため、そこからはどうしても医療機器を使った治療になってしまった。
私は迷い続けながら点滴を止めてもらう決心ができなかった。
それだけかな、父に申し訳なかったのは。後はたぶんオーライだと思う。
こんなに頑張ったのだから、もし父を不快にさせたことがあったとしてもきっと許してくれているはず。

人はごはんを食べられなくなったら静かな部屋に水分を置いて寝かせ、自分で飲まなくなったら後はスヤスヤと眠り、自分がわからないうちに息を引き取るそうだ。確かに義母はそうやって逝った。

読み終えて、父母や義父母を看取ったときの蟠りがスーッと消えた。
そして、自分が認知症になることや、いつかは逝くことがそれほど怖くなくなった。でもきっと、誰かに迷惑をかけるんだろうな。悩ませるんだろうな。

この本は友人が貸してくれたもの。
返したら新たに買って、私の本棚に置いておくことにしよう。この先いつか私が認知症になったり病気になったりした時は、娘達にこの本を開いてほしいと伝えておこう。



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