独唱

2人で山の別荘に行ったとき

夜、ご飯を食べ終わってほんわかした気持ちになったのは良いんだけど、そこから幸せな気分がどんどん高まっていってもう、ほんとにどうにも止められなくなった私。

なぜかダイニングテーブルに登り、仁王立ちでお気に入りの歌を滔々と歌い続けた。

森の中にひっそり建つ家だから、誰にも聞かれない。私の歌声以外は風や虫の声、木々や葉のすれる音だけ。

おう!いいぞいいぞ、歌え歌え!上手だなぁ!

夜の闇に私の歌声が響く。上手くもなんともないのだけど。きみがテーブルの下から拍手喝采で褒めてくれるから、またどんどんテンションが暴走して猛烈な感動が込み上げてきてどうしたらいいのかわからなくなってきた。何の感動なのかは不明。でも嬉しくて涙もポロポロ出てきて、半分嗚咽しながら歌ってた。

「ジャイアンonステージ」かよ。

本当にどうかしてる。キツすぎる。でもあんなに無防備で幸せな夜は、もう二度と来ないかも知れないな。

虫の声とともにお届けした私の甲高い裏声。独唱。


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