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【読書】クモに活躍してもらうには~勝手に応援!「ビッグイシュー日本版」(VOL.471 2024.1.15)~

「ビッグイシュー日本版」を勝手に応援する記事、第74弾です。そもそも「ビッグイシュー日本版とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。


今号のスペシャル企画は「一期一会、新種発見」です。

田金秀一郎さんと今田弓女さんが、口を揃えて近年の急速な環境の変化に言及していたのが印象的でした。

田金さんは地球の変化にも心を痛める。「この数十年、私が調査を始めてからの12年間でも、東南アジアの森は急速に消失しました。木材のみならず、「地元の人が生活のための薪を得る目的で伐採したり、農地を拡大しているケースもあり、政府機関と違法伐採者との間で銃を用いた争いまで起きています。今ここにある植物を標本にして、地元の人に保護を促さないと、記録にも残らないまま消えていってしまう。そんな思いで、新種を記載し続けています」

p.9

「ずっと通い続けてきた森の渓流沿いで、この1年の間にコケの量が半分以下になっていました。森にはコケで巣をつくる鳥もいて、コケの減少は動物の繁殖にもかかわる問題です。こういう現状を一番知っているはずの私たち生態学者が、小さな生き物の視点に立って、何が起きているのか、科学の言葉で明らかにしていく必要があります」

p.11

たった1年の間に!


馬場友希さんの言葉も、ちょと衝撃的。

「クモは地球全体で年間推定4~8億tもの昆虫を捕食しているとも言われています。害虫の大量発生を抑えるためにも、クモの生態系での役割を解明し、クモに活躍してもらうにはどうすればいいかを考えていきたいと思います」

p.12

小さいクモならともかく、手のひらサイズのクモ(今回の記事でハシリグモだと分かりました)は嫌なのですが、クモさんも重要な役割を果たしているのだと、改めて分かりました。


特集以外では、まず写真家のファブリス・モンテイロの言葉が心に残りました。

「若い世代は汚染された世界に生まれて成長しました。それ以外の世界を知らないのです」

p.14


村上春樹の『海辺のカフカ』に出てくる、空から魚が降ってくる現象が毎年起きている町がホンジュラスにあることも驚きでした。

ヨロでは、毎年春から夏にかけて(中略)「ファフロツキーズ」と呼ばれる自然現象で、海上で発生する竜巻のような空気の柱が海から魚を吸い上げ、陸地に20~30分の間、魚の雨を降らせるというものだ。
これまで魚は処分されてきたが、(中略)季節限定のグルメ商品「ヘブンフィッシュ(天の魚)」としてブランド化したところ、味が良いと評判を呼び、国内の200以上のレストランや食料品店で取り扱われるまでになった。
売り上げの80%が住民に支払われることから、彼らの平均給料は400倍に。

p.17

もともとこの町の住民は一日1米ドル以下で暮らしていたそうなので、生活の向上に役立ったようで良かったですね。


大阪・摂津市のダイキン淀川製作所によるPFOA汚染についての記事には、暗澹たる思いになりました。なおPFOAはPFASの一部です。

昭和に起きた企業由来の化学物質公害の歴史をなぞるように、ダイキンのPFOA公害が起きているからだ。汚染原因企業がその責任から逃げ、行政もその姿勢を容認する構図は変わっていない。

p.19

企業城下町が抱える問題ですね。「ビッグイシュー日本版」ではPFASの問題に、以下の2号でも触れています。


映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』を扱った記事の内容にも、愕然としました。

”鬼のような米国人は朝鮮人を皆殺しにしようとしており、韓国では物乞いの子たちが溢れ餓死している。それに比べ、ここ北朝鮮では地合いい満ちた指導者のおかげでユートピア(楽園)を享受している”……というわけだ。(中略)
脱北者たちは言う。すべての情報を遮断された世界では、ここ以外の生活が存在することを国民は知らないし信じられないのだと。

p.21、22

監督のマドレーヌ・ギャヴィンが言うとおり、「これほど世界がインターネットでつながる世界に、北朝鮮はまるで違う世界、時代に生きているかのようです」(p.22)。


今号も、学ぶことが多かったです。


「ビッグイシュー日本版」のバックナンバーは、街角の販売者さんが号によってはお持ちですし、サイトからは3冊以上であれば送付販売していただけます。


コロナ禍のあおりで、路上での「ビッグイシュー」の販売量が減少しているそうです。3ヵ月間の通信販売で、販売員さんたちを支援することもできます。


もちろん年間での定期購読も可能です。我が家はこの方法で応援させていただいています。


見出し画像は、今号が入っていた封筒のシールです。「小商い」で発送作業をしてくださった宮城さん、いつもありがとうございます!



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margrete@高校世界史教員
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