【読書】入門書としては悪くないかも~『図解 アクティブラーニングがよくわかる本』(小林昭文監修)~
*この記事は、2019年11月のブログの記事を再構成したものです。
近年話題のアクティブラーニングですが、正直胡散臭さしか感じていませんでした。「主体的・協働的な学び」、というやつですね。受け身ではなく、主体的に学べることを目指す、という趣旨はもちろん素晴らしいですが、核になる知識をきちんと得てからでないと、それは無理ではないかと個人的には思います。
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そして協働! 『広辞苑第三版』によれば、「協力して働くこと」です。
もちろん「働く」のは、「ワークブック」という言葉もあるとおり、必ずしもお給料をもらって(あるいはボランティアで)仕事をすることだけを指すわけではないとは思いますが、文科省が想定しているのは、社会に出てからのことであることは明らか。
教育とは、確かに社会に貢献できる存在を生み出すことではありますが、それは「社会人になった時、即戦力になる」という表面上の意味であってはならないと思います。
アクティブラーニングを実践している授業の映像も、複数観たことがありますが、「子どもたちに考えさせる」のは良いけれど、何十分も時間をとって考えさせるのは長すぎだと思いました。
しかもその話し合いが、上っ面な知識に基づいてのもので、中身がない。その半分の時間でも講義に使った方が、よっぽど役に立つのにと、イライラしか感じませんでした。
なーんて文句を言っていても始まらないので、たまたま図書館に行った時に目についたので(こういうのも、ご縁なので)、この本を読んでみたわけです。教員だけではなく、保護者や一般人も対象にしているようだったので。読んで、どうだったかというと……。
胡散臭いイメージは、残念ながら変わりませんでした。「65分の授業(私がもの知らずなのかもしれませんが、そもそも65分の授業って一般的でしょうか)のうち、説明は15分、演習が35分、振り返りが15分」、という時間配分の提案からして、ついていけない。
いや、授業時間中ずっと一方的に講義するのが良いとは思いませんが、やはり説明と演習の時間配分が逆な気がする。「教科書の解説はむしろ早く進む」とありますが、どうすればそれが可能なのか、もう少し具体的に書いてほしかったです。
「板書もノートもへらし、その分プリントにしましょう」って言われても、それを作るのは先生方です。「一度プリントにすれば、次回以降も使えるから」っていうのも一見納得ですが、厳密にはバージョンアップが必要ですよね。働き方改革って、なんだろう……。
「子どもになにか聞かれたら、質問で返す」っていうのも、強烈でした(たまには答えても良いそうですが)。先生に訊けば答えを与えてもらえると思わせず、自分で考える力を伸ばすため、ということですが、ふと気づきました。質問に質問で返す人っていますが、まさかアクティブラーニングで育った結果?
そして! はっきり書いてあるのですよ、「アクティブラーニングはキャリア教育としても機能する」って。少なくとも小学生に、キャリア教育なんていらない。小学生はしっかり遊ぶのが一番の勉強で、授業では世界の不思議さ・複雑さを知ることに専念してほしいと思うのですが。
とはいえもちろん、発見もありました。「ラーニング・ピラミッド」の紹介は面白かったです。学習定着率は「講義を聞くだけでは5%、本を読むと10%」という具合で続き、「人に教えると90%」だそうです。確かにそうだなと、改めて納得。
あと生徒には、「良かったことと感想だけ伝える。良くなかったことは伝えない。攻撃になるから」というのも、なるほどと思いました。教育に限らず、子育てや人間関係全般に当てはまりますね。でも良くなかった点を質問に変える、というのはなかなか難しい。いちいち「どうしてそうしたのですか?」などと、感情的にならずに訊けということなのですけど。
とりあえず、アクティブラーニングとは何なのか、どういうものなのかを知る入門書としては、悪くないと思います。
見出し画像には、教室の写真を使わせていただきました。
↑単行本