日報 1月5日
記入者:タラバミント
僕は今日、宣戦布告を受けた。
「きみの歯は、治療する価値がない」
と。
パンチパーマの親父を持つ友人と、
この正月に馬鹿笑いすることがあって
(僕の人生で馬鹿笑いなんて片手で数える程もない)、
そのとき彼は、僕の奥歯がはっきりと見えたそうだ。
「黒いプツ(点)があるね」
虫歯だった。
今までの人生で虫歯の経験が乏しい僕は、
友人にすすめられた遠方の歯科医を訪ねることにした。
車で往復二時間。
僕は予約通りの時間に到着した。
歯科医に事情を説明し、
さっそく奥歯をのぞいてもらった。
その直後のことだ。
「きみの歯は、治療する価値がない」
僕は開いた口が塞がらなかった。
(医師が奥歯をのぞいているので、
口を塞ぐのは野暮な状況ではあった)
僕の虫歯がいるのは奥歯のさらに奥。
親知らずの上であった。
親知らずが虫歯になる、とはよくある話だが、
まさか自分の身に降りかかるとはつゆほども。
「どうせ抜くなら治療しても(治療費が)勿体無いよ。
抜く気があるなら、医大に紹介状書くからね」
医師は終始、とても親切に歩み寄ってくれた。
だがこれは、まぎれもない宣戦布告である。
幸い、親知らずの悪さも虫歯の痛みも今はない。
僕がこのまま磨き勝ちするか、
それとも医大の教授に抜かれるか……。
今日は午後から出社したものの、
“やるか・やられるか”という状況に胸がいっぱいで、
勤務時間はお茶を濁して終わってしまった。
明日からすべての休憩時間中に歯磨きをしよう。
歯ブラシの先に小さなグラインダーをつけたい。
追記:終業後、パンチパーマの親父を持つ友人の親父が、
たいそうな差し入れを持って会社に現れた。
差し入れは、赤福だった。
(食べたら、すぐに歯を磨きたくなるんだろうなぁ)
という気持ちがよぎったことは、言うまでもない。
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