日報 2月24日 おにぎり慕情
記入者:かくなみ みほ
お昼ごはんに、
「お弁当に入っていたおにぎり」
が食べたくなりました。
ゆかりとごまが混ざった、シンプルな味のおにぎりです。
しっとりと海苔がまいてあります。
海苔のにおいと、ゆかりのにおい。
ごまのにおいと、ご飯のにおい。
すべてがミックスされたあの香りが、
ふいに思い出されたのです。
お弁当のおにぎりの味わいは、
作りたてのおにぎりにはないものがあります。
炊きたてごはんで作ると、お米の粒がほかほか軽くて、
ほろほろハフハフしながらほおばれる。そんな塩むすびも好きです。
しかし今日は断然、背中のリュックサックでエイジングされ、
しっとりひんやり重たくなった、ゆかりとごまのおにぎりの気分でした。
家族で遠出をするとき、
朝からおにぎりをたくさん握ってくれるのは父でした。
父のおにぎりはどっしりと重くて、
大きな手のひらを感じさせる厚みがありました。
ひとつずつラップにくるんで広告紙の上に5・6個並べ、
くるくる巻いて三角柱を作ります。
それが家族で遠出をする時のおにぎり弁当でした。
幼稚園時代の芋ほり遠足とか、
部活の大会で遠征する時なんかのお弁当には、
母の握ったおにぎりが入っていました。
「今日は小さいの3つ」
「今日は大きいの1つ」
「帰りのバス用に中くらいの1つ」
その日の細かなコンディションの注文に、
母はいつも応えてくれました。
(なんて面倒な注文をつけていたんでしょう……)
今まで、たくさんのおにぎりを食べてきました。
弁当屋さんの鮭おにぎり、友だちと交換したふりかけおにぎり、
スーパーの半額ツナマヨおにぎり、コンビニの100円おにぎり、
焼き鳥屋のすじこおにぎり、まかないの味噌焼きおにぎり。
きっとまだまだあります。
どれも、みんなおいしいおにぎりでした。
その中で、すじこも鮭も味噌焼きも敵わないのが、
「お弁当に入っていたおにぎり」です。
ふとした時に食べたくなる、
ゆかりとごまの素朴なおにぎり。
セーフティーブランケットのようなものでしょうか。
お昼、わたしは炊いたご飯をせっせと握り、
ほんのり温かみが残るくらいのおにぎりをこさえました。
久しぶりに食べたそのおにぎりは、
心を平らにしてくれる味でした。
わかりやすいおいしさじゃないけれど、
ゆかりとごまのおにぎりが、やはり好きです。