似顔絵_社長_2_4

日報 1月28日

記入者:かくなみ みほ


幼少の夕ごはん時に聞こえた、
「ご飯ですよ〜!食卓につきなさ〜い!」
というのはいい響きでした。

嗚呼……ついにごはんの時間かぁ。

煮物のいいにおいに鼻がふくらみました。



机の上でやりかけの工作や、
新しい思いつきの準備やら、
兄弟とふざけ遊ぶやらで、
夕刻、わたしはだいたい忙しくしていました。

食卓につきたくない訳ではなかったのです。
言うなれば、どうしてもつけなかった。

ごはんも食べたいけど、
やっていることを止められなかったんですね。
阿呆でした。

……炊きたてのごはんが今まさに茶碗の中で冷めていく……

そんな様子を想像するだけで、
とんでもないことをしていたという自覚が押し寄せてきます。



母の料理はなんでもうまいので、
食事の時間になれば、もう夢中でした。

結局叱られて席についても、
なんとなく後味が悪いいただきますでも、
母の料理はうまいなぁとしみじみ思いながら食べました。

うまいことが当たり前でした。

さっきまでころんと横になっていたはずの母が、
ひとたび姿を消したかと思うと、台所からいいにおいが……

魔法でも使っているんじゃないかと思いますよ、本当に。

ぶりの照り焼きとか、
あっさり作れないですよ。

ど偉い母です。
母にとって台所は聖地。

ごはんを食べるという行為は日常的で、
三食いただけることにわたしは何の疑問も抱いていなかったんです。

幼いうちには気がつけなかったけど、
自分が死ぬ前に気がつけてよかった。



母のぶりの照り焼きを思い出したので、
近々、ぶりを照り照りに焼いていただきます。






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