今日のだいたい2時 9月下旬
9月21日(火)
息子を寝かしつけてフラフラでカウンターに座った。
お昼ごはんは食べたのに、ものすごくお腹が空いてしまった。そういえば友人からもらったヴィクトリアケーキがあと2切れ残っているのを思い出し、「あれ食べていいかな?」と夫に尋ねると「2つともどうぞ」と言われた。一瞬耳を疑った。ヴィクトリアケーキを一度に2つも食べられるなんて、もうこの先の人生ではないかもしれないよね。そう夫に言うと、「あるから、安心して食べなさい」と笑われた。
9月22日(水)
温泉で「この泡を持って帰りたい」と息子が訴えてくる。
茹でたての小エビのようにプリプリに湯だった息子の左手には、ふんわりきめ細やかな泡がたっぷりついていた。左手だけ洗い流さずに残ってしまったみたい。可愛くて仕方がない様子だった。そうね、持って帰れたら素敵だよね。
9月23日(木)
どしゃぶりの中、軽トラを運転している。
息子のリクエストにお応えして、車のカートがあるスーパーに向かっていた。すがすがしい雨の量だった。こんな日はブレーキをかけると、運転席の上に溜まった水がフロントガラスをつたって滴る。今日も見事な滴りぶりだった。この現象に効果音をつけるとしたら「ら〜」だな。
9月24日(金)
とろけてしまいそうな陽気の中、庭で過ごしている。
ちょっとくたびれてきたColemanのアウトドアチェアと組み立て式のテーブル、一階の土間で使っているキャスターつきのテーブルと事務用の椅子など、夫があるものを寄せ集めて芝生に集合させてくれた。ごはんを食べる、お水を飲む。焼き菓子をポリポリして、珈琲をちびちび。ぽろぽろとこぼれるおしゃべり。いつまでもここにいられそうだった。
9月25日(土)
三谷幸喜の「ラヂオの時間」を思い出している。
ストーリーの中心ではないんだけど、大型トラックを運転しながらラジオドラマを聞くカーボーイハットをかぶった渡辺謙の様子がものすごく好きだ。そして今日、車を運転しながらラジオドラマを聞くという念願の機会が訪れた。鬼気迫る音響とセリフは一言一句聞き逃せない。(アアだめだ……これ以上聞いていたら、運転に支障が出てしまう……!)あっけなくも苦渋の決断で、音量を0にした。渡辺謙のように聞いていたら、畑に突っ込んでしまったかもしれない。
9月26日(日)
チャイをテイクアウトしたらカップふたつでもらった。
量が多いから容器を分けたみたいなんだけど、1杯の料金で2杯分もらっちゃったみたいな豪奢な気分になる。しかし乗ってきた車にはドリンクホルダーがなかった。帰り道はヒヤヒヤものだった。
9月27日(月)
北海道の山の中の友人宅にいる。
彼女は占星術に明るい。わたしの星座はてんびん座だが、「それは生まれたときに太陽と同じ位置にあったのがてんびん座だから」と教えてくれた。そしてこの後、生まれたときに“月の位置”にあった星座を知る。こういう未知との遭遇は、今ある自分の言語野の働き方とか感性とか重度の思い込みなんかを鮮やかにぶち破ってくれるのです。すっかり気持ちを良くしたわたしは、北海道なのに南の島にいるような心地だった。
9月28日(火)
口の中にバナナがいっぱい入った息子からくしゃみをお見舞いされた。
子どもと過ごす日常服は、ちょっと前まではどうなってもいい服ばかりを選んでいた。「どうなってもいい」なんて思っていたせいか、服に魂が宿っていない感じがして、なんとなく気持ちも盛り上がらないし心も荒んできていた。なので最近は、好きで選んだ服を着て過ごしたい!という気持ちを祝福している。服は皮膚みたいに着たい。かわいいのに力まず着れて、味噌汁をこぼされてもガシガシ洗えて、腕まくりもできて、そのまま山のさんぽとか水遊びもできるような。そういうわけでバナナたっぷりのくしゃみをお見舞いされても、かあちゃんはへっちゃらである。
9月29日(水)
生まれて初めて週刊文春がほしいと思った。
理由は、表紙のおいしそうなパンのイラストがものすごく魅力的だったから。いざ週刊文春に手を伸ばすと(ア、このまま買ったら尊敬で終わっちゃう)と瞬間的に思い、伸ばした手を引っ込めた。そういえばシゲチャンランドでシゲさんとおしゃべりしていたとき、和田誠と安西水丸がずっと同じスタイルで描き続けたことに対して「すごいよね。俺にはできない」と、子どもみたいに笑っていたシゲさんを思い出す。和田さんとも水丸さんともシゲさんとも同じようにはできないけれど、わたしもわたしでやり続けようと家に帰った。
9月30日(木)
なじみのそば屋にいる。
普段と違う考え方をしたい。それじゃあ、お互い注文したことがないものを食べようか。同じものばかり食べているから頭もいつもと同じように考えちゃうのかもしれないし。夫とそんな調子の良い会話を経て、今まで注文したことがないものを食べることにした。そうして目をつけたメニューがあなご天そば(温)だったのだけど、なんと夫も同じものに目をつけていた。今日のわたしたちはどうしてもあなごが食べたいらしい。結局あなご天そばとあなご天丼をとって、みんなで分けて食べた。