日報 3月15日 偶然会って「じゃあ飯でも」
記入者:タラバミント
「今夜は映画を見たい」と、パン父ジュニアが言った。
今日はパン父ジュニアの仕事の付き合いで、
富良野の町まで出て来ていた。
我が社の近所には、DVDのレンタルショップがない。
DVDを借りて見ようと思ったら、
往復50分をかけ、富良野のレンタルショップまで車を走らせる。
そんなことで、
「せっかく富良野に来たから、今日はDVDを借りなきゃ」
というパン父ジュニアの強い言い分もわかる。
こちらも付き合うことにした。
レンタルショップに入るやいなや、僕らは友人と遭遇した。
背の高い男の子で、すぐに彼だとわかった。
まさに「バッタリ」だった。
レンタルショップの入り口の脇に寄り、
「なんでこんなところにいるのさ?」
という話を、お互い笑いながらした。
ちょっと間があって、
またポロポロしゃべり、
ちょっと間があって、
少しもじもじする。
そんなやりとりの末、
「お茶でも行こうか」と友人が提案してくれた。
僕らは一つ返事で応じた。
パン父ジュニアと僕は昼食がまだだった。
友人の彼もまだということで、お茶から昼飯に変更された。
「なんか映画みたいっすね」
「なんかドラマみたいっすね」
どっちだったか忘れたが、友人がそんなことを言った。
町で偶然会って「じゃあ飯でも」なんて、
確かに映画かドラマみたいだ。
定食屋でとんかつを頬張りながら、3人で近況を聞きあった。
味噌汁をすすい、ソースのついたごはんを口に含み、
ぐびっと飲み込んでから、水をごくごく喉へ流し込む。
僕は定食を食べ始めてから、
ほとんどまともに喋ることができなかった。
定食屋で友人と飯を食う。
それだけの描写なのに、
とても慎ましい気持ちになっていた。
言葉は少ないけど、
なんてことのない心の触れ合いがたまらなかった。
ごはんと一緒に、
その場の空気や時間も食べている気分だった。
傷つけたり、助けられたり、
破壊と再生でなんとか成り立っている沢山の心。
人ってなんだろう。
僕ってなんだろう。
照れるほど嬉しい出来事もあれば、
運命の悪戯に憤慨することもあるし、
意味もなくシャウトしたい時もある。
でもそれって僕が人間だからできることだ。
だから、
大事にしたい人が生きているこの無常な世界が、
僕は愛おしくてしょうがないのね。
大事にしたい人と過ごす時間をケチりたくないから、
仕事にも暮らしにも、満遍なく力を注げる人でありたい。