はじめておいしく飲めたコーヒーのこと
今夜はインディーズ焙煎士の絹張蝦夷丸(わたしはバリ君と呼んでいる)について書きます。
バリ君は現在、北海道の上川町にて、キヌバリコーヒーというコーヒースタンドを作っています。クラウドファンディングもしていて、店舗完成までもうあと少しというところ。
普段、家でも仕事先でもプライベートで行った喫茶店でもコーヒーをよく飲むわたしですが、バリ君と会うまでは、「浅煎りのコーヒーを飲む」という選択肢は、どんなシチュエーションでもありませんでした。
浅煎りのコーヒーは酸っぱく、なんとなく味が薄いだけで、それまでおいしいと感じたことがなかったので。
彼の淹れてくれた浅煎りのコーヒー(エチオピアだったかな)は、苦くなくて、酸っぱくなくて、薄くない。
(こんな浅煎り、はじめてだ……)
浅煎りコーヒーに抱いていた頑なな気持ちが、ゆっくりと、春先の雪のように溶けていきました。
浅煎りのコーヒーに対して抱いていたことを彼に話したとき、
「こうやって淹れれば、美味しくなります」
と、淹れ方を教えてくれました。惜しむことなく。
はじめておいしく浅煎りコーヒーを飲めたその日は、忘れられない経験になりました。
そんなバリ君と出会ったのは、7年前くらい。
共通の友人を通じてお互いのことは知っていたけれど、直接会えたのは、彼が当時働いていた札幌のゲストハウスに泊まりに行ったときのこと。
その頃は夫と2人でカフェをきりもりしていて、その日も店終いをしたあと、真っ暗な夜道を南へ西へ、車を走らせました。ゲストハウスに着いたのは21時を過ぎていたと思う。
そのゲストハウスは1階が宿の窓口と、自家焙煎のコーヒー屋さんを兼ねています。
バリ君は、そこにいました。
初めて会った気がしなくて、会ってすぐに写真を撮って、何をおしゃべりしたかは忘れたけれど、(この人と出会えてよかったな)と思ったことは鮮明に覚えています。こうして角波家とバリ君こと絹張蝦夷丸は、出会うべくしてお友だちになりました。
彼を通じて、人やことと、思いがけぬたくさんの出会いがありました。
バリ君自身が陽気で面白い人なんだけど、面白いもの・ことの方が、彼に引き寄せられてきている気がします。人と与えあうこと、引き出し合うことを楽しみながら、まだ見ぬ未来を引き寄せているような。
店舗を持つと動きにくくなることは、カフェをやっていたからなんとなく想像がつくけれど、それでも彼は、いろんな場所に、いろんな人に会いに、これからも行くんだろう。
そんな“風”の要素も持つ彼のコーヒー屋、キヌバリコーヒー。
時代の流れを受けてもなお、人と人が出会い、つながり、おおらかに進んでいくに違いない、と思っています。
キヌバリコーヒーは、コーヒーを淹れるという、ささやかな日々のルーティーンを、身近な暮らしを、大事なものとして扱ってくれている。シンプルなんだけど、それこそ実は、とても稀有なことなんだと。
押しつけになってしまうかもしれないので、人に何かを勧めるときは慎重になります。それでも、
「バリ君には会ってみて」と、陽気に言いたい。
彼と友だちになったら、人生が今より1センチは楽しくなります。
これはきっと絶対。
キンバリコーヒーは、酸っぱくなくて、苦くない。
「ほどほどのコーヒー」と、本人も言っているくらい。
わたしにとっては浅煎りコーヒーとの出会い。
あなたにとってもきっと、目新しくはなくても、キヌバリコーヒーを通じて、まだ経験したことのない出会いが、あるはず。
彼のコーヒー、ぜひ飲んでみてください。
(クラウドファンディングは無事に達成されました。バリ君おめでとう!)
このnoteの更新日:2022/7/28