有機フッ素化合物(PFOA、PFOS)とはなんなのか
先日のnoteでPOPs(残留性有機汚染物質)について触れました。
そのPOPsで禁止対象となっているいくつかの農薬の成分について触れる予定でしたが、つい先日(令和5年1月24日)環境省において第一回PFOA、PFOSの水質の目標値等の専門家会議が行われたというニュースがあったので、今回はこのPFOA、PFOSについてちょっと調べてみようと思います。
PFOA、PFOSとは、どちらも有機フッ素化合物のことで、
PFOAがペルフルオロオクタン酸、
PFOSがペルフルオロオクタンスルホン酸の略称です。
ほぼ同じような性質を持つ耐熱性や耐薬品性に優れた界面活性剤で、
PFOAが主にフッ素樹脂製造の助剤、繊維、医療、食品包装紙に利用され、
PFOSは半導体製造や金属メッキの薬剤、泡消火剤、殺蟻剤などに利用される物質のようです。
基本的には環境や人体への影響などを考慮する場合、PFOA、PFOSは一括りにして取り扱われることが多いようです。
ちなみに、PFOA、PFOSの代替品として、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)やその関連物質なども存在しています。
で、なぜ今回、環境省にて専門家会議が開かれたのかというと、このPFOA、PFOSという物質は、化学的に極めて安定性が高く、水溶性かつ不揮発性でしかも難分解性の物質のため、自然環境中に長く留まってしまう性質があり、自然への影響や人体への危険性が指摘されているためです。
経産省のこのPDFサイトを見ると、PFOAは自然環境下での水生分解による半減期はなんと92年以上、最もあり得る数値として235年(!!!)という超長期的な残留性を持っていると報告されています。
その他、土壌(汚泥)での生分解による半減期は259日ということですが、加水分解性は235年と報告されており、恐ろしいまでの安定性、悪く言えば残留性がある物質であることが分かります。
このように自然環境に長く留まる性質であるため、様々な生き物への影響はもちろん、懸念されるのは食物連鎖の頂点に位置するヒトへの影響です。
マウス、ラット、及びサルでの動物実験では、いずれも肝細胞肥大という結果が出ており、人への影響としては精巣がん、腎臓がんのリスク増加の関連性を示唆する証拠が出ているそうです。
また、野菜にも影響があるようで、レタス、キュウリ、チンゲンサイ、小麦、オート麦、ジャガイモ、トウモロコシ、ホソムギなどに根の生長へ有害な影響が確認されていると記されています。
PFOA、PFOSへの懸念は数年前から国際的に議論されていて、POPsには2009年に使用等を制限する禁止物質リストにPFOSが追加されています。
(その後、2019年にPFOAが根絶物質リストに追加)
個別に各国のPFOSの対応状況を見てみると、2000年のアメリカの規制対応を皮切りに、2004年にはイギリスが、2006年にはEUが規制物質に指定しています。
(環境省による資料はこちら)
日本でも2010年にPFOSが、2021年にPFOAが関連する法律(化審法)の改定に伴い製造及び輸入の原則禁止、政令指定製品の輸入禁止となっています。
決して遅いわけではないんですが、先の欧米諸国と比べると日本は若干後手を踏んでいるような印象も受けます。
PFOA、PFOSともに同じような性質を持つ物質のようですが、その規制を巡る対応には10年ほどの期間が空いているんですね。
PFOSが主に工業系で利用されていたのに対してPFOAは繊維、医療、食品包装紙など、より身近なものに利用されていたのも関係があるのでしょうか。
代替品として普及しているPFHxSも今後、規制の対象とされるのかもしれませんね。
今回は備忘録を兼ねてPFOA、PFOSについて調べてみました。
物質としての使用や製造は禁止となっていますが、如何せん長期的に残存する性質ということもあり、まだまだ世の中のあちこちにPFOA、PFOSは存在しており、特に水質についての議論は始まったばかりです。
今後も定期的に動向を追ってみたいと思います。
【2023.2.15 追記】
PFHxSとその関連物質も2022年6月にPOPsの廃絶物質リスト(附属書A)への追加が決定されていました。
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