農業が幸せを紡げる仕事になるように
2020年の出だしは暖冬です。
それも記録的な暖冬になりそうです。
普段の暮らしではあまり寒くない方が過ごしやすいものですが、でも自然界の動植物たちは気候の変動に敏感です。
農業ではこの暖かさで色んな野菜たちが順調すぎるほどに大きくなってしまったり、通常なら寒さで甘味が増すような野菜の味に変化が出たりしそうです。
この農園のある茨城県は白菜の一大産地ですが、暖冬の影響であまり鍋料理をする家庭がないのに白菜はどんどん収穫しなければいけないので、市場には過剰供給気味になってしまっているそうです。
そうなると相場は崩れてほとんどまともな値段が付けられなくなったりします。
それはブロッコリーなど他の野菜たちにも起きているようです。
去年は千葉県に大きな爪痕を残していった台風15号、長野や福島をはじめ関東甲信に大被害をもたらした台風19号と、自然災害に見舞われた年でした。
野菜たちも大被害を被りました。
農家の方々はなんとか損害から立ち直るため、新しくタネを蒔き直したりして冬〜春に希望を託したんです。
でもこの暖冬です。
相場は大きく崩れています。
台風や暖冬などの自然現象は農家ではどうすることも出来ません。
農家は一生懸命作物のタネを蒔き、芽を出し、苗を育て、美味しい野菜を育てています。でも、自然には逆らえない。
作物たちが雨風で流されたり暖かさで大きくなりすぎたり傷み出したり。
どうすることも出来ないけど、そこで被る被害は農家が背負わないといけない。
これじゃ「農家になりたい!」と感じる人がいなくなってしまいます。
でも自分が農家として野菜を育てて感じたことは、「食べ物は命である」ということ。誰しもが生きている限り、なにかしらの食べ物を食べているはずなんです。
そしてその食べたものはその人の命になってその人を支えるんです。
少し大袈裟に言えば、農家はたくさんの人の命を任されているんです。なんと農家は尊い仕事なんだろう。そう感じました。
だから自分は、美味しくて安心して食べられる野菜を育てたい。
そのためには、畑を、土を、環境を大切にして、未来へ繋がれる野菜作りを目指したい、と思ったんです。出来る出来ないではなく、目指すこと。やり続けることが大事だと信じて。
正直、これから気候変動はますます過酷さを増していくと思います。
野菜作りも今まで通りではいかなくなる。この変化になんとか対応していかなければいけない。その時に重要になるのは、その農家の野菜作りを応援してくれる人がいる、ということ。育てている野菜たちを楽しみに待っていてくれる人がいるなら、農家は頑張れます。あの人に食べてもらいたい、喜んでもらいたい。それが野菜作りのモチベーションになるんです。
自然災害は簡単には止められない。
でもそれでも応援してくれる人がいるなら、また頑張れます。
誰もが口にする食べ物。生きていくためには欠かせない食べ物を守る。
そして無事、収穫出来て、待っている人たちのもとへ届けられたら。
農家はとても幸せなんです。
食べてくれる人の「美味しい!」という笑顔、幸せが、農家の幸せです。
農家の蒔くタネは、命のタネであり、幸せを紡ぐタネだと思います。
みんなで幸せを感じられますように。今日が幸せでありますように。
願いを込めながら、一つぶ一つぶ、またタネを蒔きます。