呼吸苦が強くなって ~母のこと(4)~
母が呼吸苦を訴えるようになって、ほぼ毎回の呼吸で「ヒューヒュー」と音が聞こえるようになった。たぶん本人的にも苦しいはずで、でも薬では(オピオイドを使っても)苦しさを取り切れずにいる。
今は家事に勤しんでくれているから、わざと任せている。病人ってのは病人扱いされるのが心底いやなものだ。だからやれるうちはやってもらっている。
もちろんこの状態がガラガラと崩れ、バトンタッチとなれば、すぐにでもできるように心づもりはしている。でも少しでも普段の生活を長く送って欲しいというのが家族の希望でもあり、本人の望みでもある。
これ以上苦しくなることなく、ポックリと逝ってほしいというのが私の願いだが、それが叶うのかは分からない。でも終末期が短く楽であることを望んでいる。
今年の桜が見れたから、それだけでもいいことにしないとね。いつも笑い合うこの生活が、突然終わりを告げるのだと分かってはいる。母がいない日がいずれ来たら、ぽっかりと生活に穴が開いたようになってしまうのだろう。そのとき私や父はやって行けるのだろうか。やるしかないけれども。
一日でも長くと思う患者や家族の気持ちが、いま一番よく分かる感覚だ。