ローリング・ストーンズとAC/DC
ストーンズの最新作、「ハックニー・ダイアモンズ」が発表されて1年以上経つ。タイミングを完全に逸しているのだが、発売直後にちょっと思ったことをまとめたい。
同アルバムからの第一弾シングル「Angry」。
この曲は典型的ストーンズギターサウンド、とも評された。ギターのカッティングに関して言うと、このスタイルの初出は1972年「メインストリートのならず者」収録の「Soul Survivor」の間奏&エンディングだと思う。
ちなみに↓の記事でもごくちらりとだけ触れられているのだが、同感。
ともあれ「Angry」がストーンズ典型ギターサウンドと言えるのも確かにわかるのだが、バンド全体の演奏について見るとAC/DC的ではなかろうか。重心の低いタイトなリズムにシンプルなギターのカッティングの押し引き。スカスカなのだがあくまでロック。AC/DCの十八番スタイルと同じだとは言えまいか。たとえば↓こんな感じ。
「Back in black」もそうかな。
AC/DCへの接近は、ビルからダリルにベースが変わり、さらに今回チャーリーからスティーヴにドラムが変わったことが大きい。要はこれまでの横ノリから縦ノリに近づいたのだと言える。
改めて聴くと、ビルからダリルにスイッチした「ヴードゥー・ラウンジ」もかなりそれ以前とリズム感が違う。そのころから、スイングする自由度の高い感じからタイトで手堅い感じに少しずつ変化していたのだ。そしてチャーリーの他界とスティーヴへのスイッチでそれはより決定的となった。
「Angry」がAC/DC風味に接近しているのは、「Angry」と同系統の曲「It must be hell」と比べるとよくわかる。こちらは1983年のアルバム「アンダーカヴァー」収録。言うまでもなくリズム隊はビルとチャーリーだ。そしてやっぱり「Angry」とはノリが違うのである。
同じ感じを狙ったように思うのだが、やっぱり違う。ちょっと軽いというか重心が高く軽やかというか、スクエアではない感じ。これがチャーリー在籍時のストーンズの体質だったのだ。
ちなみに「Angry」もチャーリーのスタイルでドラムを叩いてるカヴァーバージョンもあって、それはそれでちょっと面白くはあった。
でもやっぱり、そもそもスティーヴが叩いてたのをチャーリーのスタイルのプレイに後から差し換えてもちょっと違う。まあベースも違うというのもあるけど(なお「ハックニー~」ではダリルは弾いていない)。初めからチャーリーが叩いてたら、やっぱり「It must ~」に近くなってたと思う。
ちょっと話は戻るのだが、タイトなリズムにスカスカなギターの押し引きが乗っかる元祖は、AC/DCよりこちらという気もしたりする。
そう考えると、今度はAC/DCはこの辺を参考にしたのか?と思ったり。結局ストーンズが発明したんじゃん、みたいな気もする(ギターのリフはライ・クーダーがパクられたと怒ってるらしいけど)。
今回なぜこのタイミングでストーンズとAC/DCについて書こうかと思ったかというと、たまたま知った↓のインタビューがきっかけである。キースはAC/DCをファイヴァリットに挙げていて、「そういうことだったのか!」とつながった気がしたのである。
そして両者は共演もしているのであった。
キースは「ハックニー~」発表時、今後はスティーヴとの新しいストーンズサウンドに挑戦していく、みたいなことを言っていた。今後は、ストーンズ王道のロックンロールはよりAC/DC風味に近づくのでは?と想像している。