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ジャコビニ彗星の日
ジャコビニ流星群(りゅう座流星群)、今晩あたりが極大だそう。コアなユーミンファンなら自動的に思い出すのが『ジャコビニ彗星の日』だろう。僕はコアなファンではなく25歳を超えてから周りの人たちの影響で聴くようになったので、古い名曲をあまり知らない。
さてこの歌も1979年にリリースされた「悲しいほどお天気」というアルバムに収録されていたすごく古い歌。その頃の僕は同年代の御多分に洩れず洋楽ばかり聴いていたので、ユーミンのこの歌を知ったのは随分と後になってからのことだ。20世紀末にユーミンがバラードの集大成的アルバムを出したときに初めて耳にしたのかも知れない。
『ジャコビニ彗星の日』 松任谷由美
夜の FM からニュースを流しながら
部屋の灯り消して窓辺に椅子を運ぶ
小さなオペラグラスじっと覗いたけれど
月をすべる雲と柿の木揺れてただけ
72年10月9日
あなたの電話が少ないことに慣れてく
私はひとりぼんやり待った
遠くよこぎる流星群
それはただどうでもいいことなのに
空に近い場所に出かけてゆきたかった
いつか手を引かれて河原で見た花火
夢はつかの間だと自分に言い聞かせて
「シベリアからも見えなかったよ」と
翌朝弟が新聞広げつぶやく
寂しくなればまた来るかしら
光る尾を引く流星群
歌詞では10月9日となっている。「ここのか」と「ようか」では拍数が違うので歌詞を作れなかったのかも知れないし、オペラグラスを覗いているうちに日付が8日から9日に変わったのかも知れない。
が、調べてみると、1972年にはジャコビニ彗星と地球が軌道上で完全に交差し、地理的に好条件だった日本列島では本体彗星から放たれる数多くの流星が見られるだろうと大いに期待されマスコミで騒がれたにも関わらず、なぜかまったくと言っていいほどに観測されなかったらしい。歌詞は史実に忠実だったのだ。
歌のタイトルはジャコビニ彗星の日なのに、歌詞ではすべて流星群となっている。当時はなぜかなと思っていたが、彗星の尾になって散っていく物体が地球の大気圏に入って流星群となるので、歌詞の表現は正しかった。
この歌が胸から離れない理由は他にもある。「月をすべる雲と柿の木揺れてるだけ」という箇所。20代の後半、東京時代、ちょっと年上のCA と付き合っていた…と言い切っていいかどうか、まあ微妙な大人の関係だった頃がある。
一度しか行ったことのないその人のご立派な家が世田谷区柿の木坂にあった。それだけのことであるが、この歌を聴いたり歌ったりするときに、「柿の木」の箇所で脈が0.5拍ぐらい飛びそうになる。ただし、昨今は単なる老化による不整脈ではあるけれど。何にしろ、僕のスマホに入っている唯一のユーミンの曲。
今夜の神戸は雨模様の予報である。いずれにしても窓辺に椅子を運んでオペラグラスを覗いてみても、庭の色づき始めた花水木が揺れてるだけだろう。あしたは京都泊。都のどこかでこの歌を歌ってみようかな…