【ギンコ・ビローバ】樋口円香 考察
この記事は【ギンコ・ビローバ】樋口円香のネタバレを多分に含んでいます。問題ない方のみお進み下さい。
初めまして。
ついにノクチルで2人目の限定pSSRが実装されましたね。やはりというか、何というか、樋口円香でした。ノクチル1週目のpSSR実装と同じ流れなんでしょうかね?
まあ、性能や実装順どうこうは置いておいて、今回の記事では【ギンコ・ビローバ】樋口円香のアイドルシナリオ、及びTrue Endコミュの考察をしていきたいと思います。
まず、【ギンコ・ビローバ】のアイドルシナリオのタイトルは『囀』『信』『噤』『偽』そして、Trueコミュの『銀』。何というか、非常に直感的なタイトルであると思います。
ぱっと見で、それぞれ対義的なタイトルになっているのはすぐに気付くと思います。『囀』と『噤』、『信』と『偽』。そしてまた、コミュの展開も美しいんですよね。
【ギンコ・ビローバ】でのアイドルシナリオは、4つあると思いきや、その実二つに分類されます。
『囀』と『信』、『噤』と『偽』。雑破に括って仕舞えば、上半分と下半分ですね。
今回のシナリオは非常にシャニPが目立つ構成です。『囀』において、囀っているのはシャニPの鼻歌であると思いがちです。もちろん、『囀』における登場人物はシャニPと円香しかいません。
しかし、シナリオの分類を『信』までの二分割にすれば、登場人物は電車内で円香の噂話をしていた女子高生2人も含まれます。
するとどうでしょう、車内での喧騒に混じって聞こえてきた、年頃の女子高生がしがちな噂話。それこそが鳥の囀りが如き印象を受けませんでしょうか。
その後の円香とシャニPの会話です。
車内で聞こえた『囀り』に対して、あれは嘘だから、と弁解する樋口。この時点での樋口はシャニPが寝ていると思っているので、口に出した言葉は紛れもなく本心なのでしょう。まあ、樋口もまあまあ面倒くさいので、シャニPが起きているのを知った上で本心を吐露した可能性もありますが。
ここは、アイドルに対しての認識が変わって来ている樋口の成長を垣間見れる貴重なシーンであると思います。シャニPに対して、自分はアイドルを『誰彼構わず愛想を振り撒く仕事』だとは思っていないことを直接伝えているわけですからね。
それに対して、シャニPはただ一言、円香の言葉を信じるよと、『囀り』を否定する円香を『信じる』ワケです。
そして、3番目のコミュである『噤』。このシナリオこそ、Trueに直接繋がる非常に重要な場面なのでありますが、それはまたTrueの項目で解説致します。
前述の通り、【ギンコ・ビローバ】のシナリオは大きく二つに分割できます。その後半部分となるのが、『噤』と『偽』です。
『偽』では、不安に戦慄く新人アイドルを本心を隠し、上辺だけの言葉で慰める円香。そこにいるのは、『信』で自分の本音を信じてくれと願った純粋な円香ではなく、本音をひた隠して口を『噤み』、『偽物』の言葉で場を乗り切ろうとする、いわば現実的で大人な円香なのです。
『囀』と『信』、『噤』と『偽』。それぞれが対応し、否定しあい、【ギンコ・ビローバ】全体のテクストを生み出しているのであります。
この、二律背反ともいえる矛盾した人物像。それをこの四つのシナリオとタイトルの漢字一文字ずつで表現しているのが、非常に美しい構成であると感じるのです。
そして、Trueシナリオである『銀』。
【ギンコ・ビローバ】を語る上で、『噤』のコミュは欠かせません。『噤』のコミュでは、円香とシャニPが映画の試写会に参加しているのですが、その後、喫茶店で円香が映画関係者に映画の感想を求められます。ふと思いましたが、円香、シレっとシャニPと映画デートしてるんですよね。頑張れよ浅倉。
これが円香の感想なのですが、わりとしっかりコメントしてますね。適当に濁さない辺りに円香のプロ意識が垣間見えます。で、注目してほしいのが『世界が金色に染まる』、『心が世界に溢れ出た表れ』この二点です。
【ギンコ・ビローバ】では、pSSRにしては珍しく、Trueシナリオで初めて登場演出が披露されます。
これがその場面なのですが、まあ、円香が見た映画そのままですよね。ラストシーン、金色のイチョウの葉が画面に溢れ、世界が金色に染まるーーー。そして、円香の心が世界に溢れます。
「あなたは愚直で、スーツも折り目正しく美しい。ああ、ぐちゃぐちゃに、引き裂かれてしまえばいいのに」
溢れ出た心情は、円香の本心なのでしょう。そもそも、樋口円香とは矛盾性を抱えたキャラクターです。人に期待されたくない、でも、期待を裏切ることは何より怖い。自分を試されたくない、でも、大体のことはそれなりにこなせる自負がある。
自分を知るほかの誰よりもきっと、円香は自分がまっすぐな人間ではないことに気付いている筈なのです。だからこそ、誰よりもまっすぐで完璧なシャニPに嫉妬するし、嫌悪感を抱き、憧れるんです。自分はそうは生きていけないから。憎悪は憧憬の裏返しなのです。
ここで今一度、Trueシナリオのタイトルを考えてみましょう。
そのタイトルは『銀』です。普通なら『金』で良さそうな気もしますが、【ギンコ・ビローバ】のTrueシナリオはやはり、『銀』でなくてはなりません。
そもそもギンコ・ビローバってなんだよと思いませんでしたか?僕は思いました。蟲師のギンコしか思い浮かびませんでした。やべぇなと思ってググってみたのですが、大体「イチョウ葉」を示していると考えて間違いなさそうです。カードイラストもイチョウの葉が全面に押し出されていますし、前述の映画とリンクした内容であるなら、イチョウ葉そのものなのでしょう。
で、イチョウなんですけれども、漢字であらわすと『銀杏』なんですよね。そう、銀。
イチョウ葉自体は金色であるのに、名前には『銀』の文字を冠しているんです。非常に矛盾した名前であると思いませんか?
そして、矛盾といえば、前述の通り樋口円香を構成する非常に重要なファクターです。樋口円香というキャラクターを表現するための記号として、イチョウが用いられたのではないでしょうか。
今までに描写されてきた、円香の心情や生き様、
『囀』『信』『噤』『偽』の四つのコミュで丁寧に表現された、矛盾というエートス。
きっと、円香は金色でありながら『銀』の名を冠するイチョウと同じなんです。円香も、理想を抱きながら、現実から目を背けられずに懊悩している。
そんな円香だからこそ、Trueシナリオは『銀』でなくてはならないんです。イチョウが矛盾を表すメタファーであるからこそ、【ギンコ・ビローバ】のコミュ全てが、「矛盾を抱えた樋口円香」というキャラクターの造形をより一層深くするのです。
以上、お付き合い頂きましてありがとうございます。
勿論、上記事柄はすべて単なる一個人の感想ですので、他に新たな発見、意見等ございましたらご連絡頂けると幸いです。
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