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拡張されない身体 ~運転と運動神経~

私はすこぶる運動神経が悪い。そしてすこぶる運転が苦手である。
そして、運動神経と運転には密接なかかわりがある。

この文章を読んでいるあなたは自動車教習所に通おうとしている運動音痴で、「運動音痴が運転していいのかなあ」と不安になって「運動神経 運転」などと検索してここにたどり着いたのかもしれない。
結論から言えば、運動神経と運転能力には関係がある。絶対にある。ないわけがない。常識的に考えて。運転って身体を動かしてるんだから。

世の中には「運動神経と運転はほとんど関係がありません」とまやかしを喧伝するサイトも多くあるが、それは教習所がポジショントークをしているだけだ。
残念。運動神経と運転能力には関係がある。

運藤神経が悪いとは?


さて、運動神経が並み以上な人からすれば、「運動神経が悪い」とはどのような状態なのかわからないと思う。私にも「分数の計算ができない」がわからない。共感・想像できないことは恥ずべきことかもしれないが、仕方のないことではある。

「運動神経が悪い」にはパターンがある。恐らくこの4つに大別できるだろう。
1.筋力・持久力など身体の能力が足りない
2.思ったように身体が動かない
3.瞬時の判断ができない
4.複数の動作が同時にできない
このすべてを兼ね備えた運動音痴の申し子がそれぞれについてもう少し細かく説明しよう。

1.筋力・持久力など身体の能力が足りない

これに関して言うことはない。ヒョロガリがムキムキマッチョに腕相撲で勝てるわけがない。

2.思ったように身体が動かない

ここが運動音痴のキモだろう。自分自身の頭の中では正しくスマートに動いているのだが周りから見ると全く違う動きをしている……というのはよくある話だ。アメトーーク!の運動神経悪い芸人も頭の中ではオリンピック選手のように動いている。それが実現できないだけで。

ただ、複雑なのは、運動音痴の全員が全員、すべてのスポーツが苦手なわけではない、という点である。

20歳になって人生で初めてキャッチボールをする運動音痴を例にとる。
ボールを投げてみる。大抵うまく投げられない。見かねたキャッチボールの相手がこういう風に投げるといいよと脚の動かし方腕の動かし方をゆっくり見せてくれる。ボールを投げてみる。うまく投げられない。運動音痴だからである。

対してうまく投げられる運動音痴もいる。意外かもしれない。これは偶然頭の中の動きと実際の身体の動きが一致していただけ、偶然ボールを投げるために必要なポイントを掴んだ体の動かし方をしていただけである。
つまり、運動音痴の本質というのは修正能力の欠如である。
(長々と説明したが別にこれは新たな発見ではない。言い換えに等しい。)

3.瞬時の判断ができない

これは単純な脳の瞬発力の話で、身体がどうこうではなく脳が指令を出すのが遅いとどのような肉体であれドッジボールでアウトになってしまう。
少し複雑になるともうどうしようもなく、サッカーで誰にパスを出すのかすら決められない(し、決められたとしてもうまくパスはできないのだが)。
このタイプの人間は事前に考える時間のあるスポーツ(ボウリングやゴルフなど)はさほど苦手ではないと考えられる。

4.複数の動作が同時にできない

これは2と3とも重なる部分が大きい。

これができない。認知症予防の体操ができない。認知症ではないのに。

運動神経が悪いとこんなに事故りそう

自分で書いといてなんだが1は運動神経が悪いとは言わない。トレーニング頑張ってください。絶対うまくいきます。そしてもう二度と運動音痴を名乗らないでください。

運動音痴の大半が2,3,4の自覚症状があるはずです。

客観的に見て、2,3,4に該当する人間が運転をしていいわけがない。
2の運動音痴はアクセルとブレーキのはたらきが身体に直結していない限りアクセルとブレーキを踏み間違える。3の運動音痴は何も避けられない。4の運動音痴はバックミラー→サイドミラー→直接目視の安全確認をしながら曲がれない。
実際に私はよくアクセルとブレーキを踏み間違える。教習所時代には警察署横を左折するときに赤信号を飛び出してきたクソガキを轢きかけた経験がある。というか教官が補助ブレーキを踏まなければ確実に轢いていた。なおかつ車の大きさが正確に認知できないためギリギリに駐車するみたいなことはできない。路肩に寄せることすら恐ろしい。

そもそもよく身体をぶつけるアザだらけ人間が車をぶつけないわけがない。
メディア論で有名なマクルーハンは、自動車は足の拡張物であると主張する。そうであるならば、脚を直感的に動かせない人間が、不本意に身体をぶつけてしまう人間が、そこまで直感的でもない車を思うように動かせるわけがない。

世の中の意見は違うが

Yahoo!知恵袋などの質問系サイトに「Q.運動音痴でも運転できますか?」「A.出来ますよ笑 運動音痴の私が証明してます笑」みたいなやりとりがあふれかえっている。やはり運動音痴でも運転はできるんだ。そう思ったあなたはクリティカルシンキングが足りない。
これには明らかにデータの偏りがある。
運動能力と運転に本当に相関がないのであれば、運動音痴かつ運転が苦手な人もいなければおかしい。その人にとっては「運動音痴は運転できません」という結論が出るはずだ。
そう。知恵袋にはちょっとした自慢をしたい人が集まっているせいで、運動音痴で運転ができる人だけしゃしゃり出て、運動も運転もできない人は沈黙を貫いているのだ。
これは完全に知恵袋への悪口である。申し訳ない。
ちなみに私は心の中で「バカが。なめやがって。お前の危機管理能力と危険予知能力が低いだけだろ。」と思っている。

最後に

かくいう私も仕事の都合上運転はしている。
ただ絶対に誰かを轢くだろうなと思いながら運転しているし、人よりも「事故ったときに被害が小さくなる運転」をしている。
絶対に法定速度は守るし、ダイヤマークではブレーキに足を置いているし、自転車はそうそう追い抜かないし、バスは絶対に追い抜かない。これは安全運転ではなく自己保身運転なので褒められたものではない。恐らく後続の車に迷惑をかけている。
運動音痴に運転をするなとは言わないが、少なくとも私に運転をさせないでほしい。

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