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なくなりますか

「なんか来ちゃうんだよねぇ」


東京のオフィス需要が静かに減っているというニュースが出ていました。

知人の会社も自社オフィスを居抜きで転貸して在宅勤務を進め、自分たちはこじんまりした場所へ引っ越す予定だといいます。

群馬県あたりでは、都内から引っ越す人で戸建て需要が増しているという話もききました。

自分はテレビ局へのアクセスを第一に考え都内にいますが、リモート会議が始まって以来、もはや数えるほどしか行っておらず「もうどこでもいいじゃん」という気持ちになってきています。

それはさておき、テレビ局は、普通の企業ですから、制作や編成以外にも、営業、人事、総務、経理、業務といった部門もあります。

余談ですが、テレビ局って新卒で入社するには超狭き門です。ですが、入社した人がすべてテレビ制作に携わるとは限りません。

もちろん入社後の異動やらで現場に行くこともあるでしょう。でも、新卒でいきなり現場に配属されるって実は一握りです。テレビ作りたくて入ったのに、希望部署に配属されないケースもあります。

かつてテレビ局は、人気就職先ランキングの上位常連でした。しかし、去年、耳を疑ったのは、今やキー局の内定を蹴る学生も出てきているといいます。あぁ、時代ですねぇ。

ところで、テレビ局の中もリモートワーク化が進んでいます。現場に行かないと収録できないような制作部門でさえ、スタッフの数を減らして対応しています。

なので24時間、いつでも人がいたスタッフルームでさえ、今はガラガラ。関係者以外は立ち入り禁止です。

先日、とある局へ行ったときのこと。普段に比べたらすいていますが、それでもデスクワークしている方、結構います。


中間管理職の方がため息をついていました。

「本当は来なくてもいいんですけど、上が来ているから、来ないといけないような雰囲気なんですよ…」

あぁ、日本ならではの同調圧力か。

でも、その「上」という、いわゆる窓側の方に座っている人に言わせると

「(来なくていいんだけど)なんか来ちゃうんだよね…」ですって。

「じゃぁ、来なければいいじゃないですか!」と、喉まで出かかりましたが
いろんな事情を察して呑み込みました。

そこには、ハンコ問題(書類に判子を押すだけのために出社)だけでなく、
実は「リモートへの対応が遅れている世代」であることや「家に居場所がない」といった切実?な理由も見え隠れしています。

でも、問題の本質はもっと違うところにあるのでは?

学校を卒業したら誰もが就職というルートを経て、学生気分が抜けないままでいると、会社が学校の延長のように感じることもあるでしょう。

サイバーエージェントの藤田社長が「会社は学校じゃねぇんだよ」と言っていましたが多くの人はまだまだ「仕事=所属」、そう学校気分でいます。

「仕事とは所属することで成り立つから、安定した大きな組織に所属することが仕事の成功であり目的」

就職活動では、会社の知名度って大きな要因になりますね。いきなり、スタートアップやフリーランスになる人もいますが、まだマイノリティです。
そこには、世の中に仕事=所属という考えが根付いているため、所属すること、つまり「居る」ことが仕事だと思ってしまうのでしょう。

情けない話、自分は新卒時、仕事はバイトの延長。給料は、痛勤地獄の我慢代だと考えていました。なんて意識の低いことか。

ポイントは、会社員か起業かという二者択一ではなく、その仕事をよく考えた末に選んだという満足感を持てるかどうか。

「自分は明確な理由で今の職を選んだ」と、己の人生を舵取りしている感覚を実感することが重要で、その感覚があると、会社員だろうと起業家だろうと、成果につながると思います。

世界的に見て、日本人は「働いている会社が好き」と思っている人の割合が低いといいます。アメリカや中国では、会社好きの人が多いのですが、そこには「気に入らなければ転職する」という文化があるからです。

日本人は安定という恩恵のかわりに自分を殺して会社に居続けるため、
「給料は我慢代だ」と考えてしまうのです。

なので、人によっては「会社に来る」ことで、「働いている」という気持ちになれるのかもしれません。

その場合、出社したことで満足してしまうため、能力ある人でも、生産性が上がらないという、本人にも会社にも不幸があるでしょう。

今年、しきりにDX(デジタルトランスフォーメーション)の文字を見かけます。インフラがデジタルになっても、人がどれだけ追いついていけるのか。

若い世代は、適応能力があるにしても、今年の新卒のみなさんは、そもそも会社に行かれないので、この半年は、なかなか経験を積めない空白時間になっています。

オフィスワークが減って、リモートが加速しても、以前と同じような生産性を維持できるのでしょうか?

あと、キャンパスに行かれない大学1年生問題もニュースになっていました。立命館大学では学部生の2.3%が退学を本格的に考えていて、
「どうするか考えている」も7.5%。合わせて、退学を視野に入れている学生は9.8%です。また、休学を視野に入れている学生も4人に1人だといいます。

かつて味わったことのない環境から生まれる新しい働き方と人間関係。
今の学生さんたちの10年後、20年後。少なくとも同調圧力による「なんか来ちゃうんだよねぇ」は、無くなっているでしょうね。

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こちんだ/放送作家 文字で奏でます
沖縄出身のお笑い芸人さんが命名してくれたペンネーム/テレビ番組の企画構成5000本以上/日本脚本家連盟所属/あなたの経験・知見がパワーの源です