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日曜劇場「御上先生」が面白い
私が大河ドラマ「べらぼう」にハマっていることは、記事を読んで下さっている方はご存じかと思うのですが、もう一つ放送を楽しみにしている作品があります。
それは、日曜劇場の「御上先生」です。
放送時間もべらぼうの直後であるため、日曜夜は忙しい。
「御上先生」は今時珍しい完全オリジナル作品で、主演は松坂桃李さん、VIVANTやアンチヒーローのスタッフの方が組んでいるということで、期待値は高かったのですが、余裕で超えてくる面白さです。
「御上先生」のここが面白い!
①あえて「王道」を避ける
多くの学園ドラマでは、クラスに必ず1人は不良がいて、熱血教師と時にいがみ合いながらも成長していく、という展開が往々にしてあります。
あまのじゃくな私はそのような展開が来ると「知ってた!」となってしまい少々食傷気味になってしまいます(あくまで個人の感想です)。
また、中学・高校時代の私は成績が飛び抜けて良いわけでも悪いわけでもなく、先生とそんなに仲が良いわけでもなく、友達が多いわけでもなく、教室の隅っこで本を読んだり、掃除当番も地味~にこなしたりと目立たない生徒でした(辛辣)。
別にクラスの人気者になりたかった、目立ちたかったというわけではありませんが、いわゆるやんちゃな生徒が面倒を見てもらって成長していき脚光を浴びているのを見ると、「私はずっと真面目にこなしてきたのに」とモヤモヤしてしまうのです(私だけではないと信じたいところ)。
「御上先生」の舞台は架空の学校なのですが、予備校が前身の進学校という設定です。ですから「授業を聴かない」とか「反抗的」みたいなステレオタイプの問題児は居ないのです。
盛り上がりに欠けると思うでしょう?
この作品においては、この設定がむしろ強みに働いています。
生徒が比較的素直に話を聴くためストーリーの進みが良く、社会的なテーマや官僚社会の怖さみたいなものを織り込むことができるのです。
例えば、御上が同僚(演:岡田将生さん)に裏切られて天下り斡旋の疑惑から学校への派遣(実質「左遷」)になるとか、
生徒に不倫をスクープされた教師カップルのうち、女性の教師だけが辞職に追い込まれたとか。
さらにその不倫のスクープが、公務員試験会場での殺人事件に繋がっているとか。
オリジナル作品ということもあって展開が予測できず、日曜日が待ち遠しいです。
②はっとさせられる台詞の数々
御上本人は常に冷静で頭脳明晰、自分の考えを臆することなく生徒に開示していきます。
その中でも特に印象に残ったのは、
「エリートは、ラテン語で『神に選ばれた人』という意味だ。この国の人たちはエリートを、高い学歴を持ち、それにふさわしい社会的地位や収入のある人間だと思っている。でもそんなのはエリートなんかじゃない。『上級国民予備軍』だ」
「みんな、どんな思いで今受験勉強をしてる?過酷な…過酷過ぎる競争に勝ち抜いてようやくつかみ取った人生が、『上級国民』でほんとにいいの?」
という台詞。
中学受験や大学受験を戦ってきた者として、耳に痛い言葉でした。
告白すると、京大に受かったとき、努力が報われて第一志望校に合格できたことを喜ぶ気持ちだけではなく、「これでもう『安心』だ」という気持ちがありました。
私がすんでのところで天狗にならずに済んだのは、周りの人間があまりに優秀だということに気づかされたからです。
私が1ミリも理解できないような法理論や学説などを理解し、吸収し、私に教えてくれるような友人・先輩にたくさん出会ったことで、自分を誡めることができたのです。
日本舞踊を習い始めたのは、学歴でふんぞり返る以外の強みというか、「これは私しかいないだろう」という事柄が欲しかったからということがあります。
話が脱線しましたが、今「進学校」と呼ばれる学校に通っていたり、「高学歴」と呼ばれる学歴を持つ人たちは、まさに自分のことを言われたような気持ちになったのではないでしょうか。
さらに御上は続けます。
「真のエリートが寄り添うべき他者とはつまり、弱者のことだ」と。
そして御上は、生徒たちにそうなってもらうために「左遷」とも思える人事を甘んじて受け入れ、高校に来たのだと。
綺麗ごとのように思えるかもしれませんが、想像力を働かせて相手の立場になって物事を考え、「何かできることはないか」「こうすれば良くなるかも」と思いやることは、ただ自分のためだけに生きるよりも尊いし、生き甲斐もあると思います。
③実力派揃い
私個人は、俳優さんに対して「演技派」「実力派」という言葉はあまり使いたくないのですが、それでもこの作品は粒ぞろいというか、よく抑えたなという方ばかりです。
まず、主演の松坂桃李さん。
この役はとても難しいと思います。あからさまに感情を爆発させるキャラではないから大げさなことはできない。だから細かな言い回しや表情で見せるしかない。
しかし松坂さんは、まさに御上のキャラクターが乗り移ったかのように自然に演じられていてすごいとしか言い様がない。
裏がありそうな古代理事長(北村一輝さん)、御上に対してうっすらと対抗心を燃やしていそうな溝端主任(迫田孝也さん)、そして、公務員試験会場で凶行に及んだ眞山弓弦役の堀田真由さん。
生徒役も、神崎君(奥平大兼さん)や富永さん(蒔田彩珠さん)などなど、「次世代のスターを集めました」感があります。数年後、この生徒役を務めた方がブレイクするんだろうなという予感がある。楽しみですね!!
毎回引きがうまいので、「ここで終わりか~!」となりっぱなしのこの作品。目が離せません。