コロコロ変わる名探偵(その5)┃ショートショートnote杯
「むしゃむしゃ。つまり、犯人はここが現場と誤認させるトリックを使ったのです」
「探偵さん。お腹が空いているのは分かりますが、ここで食べながら推理を披露されましても」
「まあ、良いじゃないですか縦溝警部。今は私とアナタ二人きりなのですから」
「ですがね……」
「何か問題でも?」
「さっきからいくつコロッケを食べるんですか」
警部は呆れていた。
探偵の手にしているコロッケはこれでもう10個目だ。
「何言ってるんですか。ここはコロッケ屋ですよ。全てのメニューを食べておきたいのです。牛肉、カレー、カボチャ、クリーム、カニクリーム、タコス風、ハワイアン、麻婆コロッケに……」
「本当の事件現場じゃなくここを指定した理由がようやく分かりましたよ」
警部は一人パトカーに乗り込んだ。