ショートショートnote杯┃金持ちジュリエット
その町には有名な女がいた。
金持ちジュリエットと女は呼ばれていた。
「金持ちジュリエット!」
「はーい」
「おーい、ジュリエット」
「今行くわ」
ジュリエットはよく働いた。
朝は沢山のビンが入った箱を荷車に載せて牛乳配達。昼は食堂で料理を運び、夕方になると大きな荷物を抱えて帰る。
真面目で笑顔を絶さない姿は町の人に慕われる理由として充分だった。
そんなジュリエットにある依頼が舞い込んだ。
「これは、私にしか出来ないわね」
現場には既に多くの人が集まっていた。全員がジュリエットを見に来たと言っても過言ではなかった。
「えい!」
ジュリエットは荷物を車に載せる。大きな歓声と拍手。
「教会にある重たい〈金〉属製の鐘を軽々〈持ち〉上げるなんて。さすがカネモチジュリエット!」