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オリジナルのCorner Canterbury
そして2008年、波乱万丈な人生ながらも、がむしゃらに仕事をしてきて少しだけ余裕の出た頃、某オークションで遂にオリジナルのRED入りTANNOY/Corner Canterburyを見つけた。しかもマニア垂涎の飴色キャップである。当然、かなりの額だった。やはり人気で問合せや入札数が非常に多かった。
以前、せめて廉価版のⅢLZなら完全オリジナルで入手できはしないかと極上品が出品時にオークションで入札したが、落札し損ね苦い思いをしていた。
ただ今回のオークションには無条件で落札できる”即決金額”の設定があった。私は決心がつかず、毎日そのオークションの状況を見てはやきもきしていた。…そして迷いに迷い、締切前日遂に決心し即決金額で落札をした。
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エンクロージャーはかなりボロボロだった
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・徹底的にリペア
送られてきたTANNOYは予想はしていたが相当古いもの。いくら極上とは言えユニット以外は相当やられていた。ユニットは”飴色キャップ”と言われるREDの中でも初期の五味康佑のオートグラフより更に前の初期モデルだった。オリジナルの状態に手を入れると価値が下がる為、できるだけそのままでという話をよく耳にするが、私の場合転売する気など更々無いためいっその事しっかりリペアしようと決めた。しかし、やり過ぎると音自体が変わってしまうのでそのさじ加減は難しい。早速、家の家具全般で大変お世話になり、ヴィンテージオーディオのリペアの仕事も数多く手掛けているスタンダードトレードの社長に相談しお願いした。私の拘りの強さは良く理解してもらってはいるが、その中でも一際大事なCorner Canterburyをお任せする為、仔細に渡り注文を付けさせていただいた。とは言え、基本的には信頼しているので「オリジナルの意匠は尊重しつつ、しっかりと仕上げてください」とお任せした。
※我が家のリフォームから家具全般で長年お世話になっているSTANDARD.TRADEのHP ↓
…待つこと数ヵ月、遂にリペアを終えたハコが届いた。梱包を解かれたCorner Canterburyを前にして私は嬉しくて涙がこぼれそうになった。素晴らしい!さすがは信頼しているスタトレの仕事ぶり。あんなにボロボロだったエンクロージャーがしっかりリペアされ色・仕上げともに申し分ない。それどころか期待以上の仕事ぶりだった。運んできてくれた職人さんと社長に「有難うございます。一生恩に着ます!」とお礼を言った。それから今一度、倉庫に置きっぱなしだったハコの中の湿気を十分に抜き、ハコを横倒しにしユニットの取り付け、内部の配線やハンダなどを丹念に行った。
その時、既に私が購入してから1年が経っていた。
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見違えるようにきれいになった
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サランネットも新しいものに張り替えてもらった
長期間音出ししていなかったためエージングには暫くかかるだろう…と思っていた。
しかしそんな心配は全くいらなかった。Corner Canterburyはいきなりいい音で鳴ってくれたのである。それは正にTANNOYの代名詞である”いぶし銀の音”そのものだった。そしてあの日、札幌音蔵で初めて聴いたMoniter SILVERの音と重なった。
…かくして20年の時を経て私はやっとオリジナルのCorner Canterburyの音を手に入れることができた。