ヴィンテージオーディオとの出会い①
・ヴィンテージショップ 札幌音蔵
私がヴィンテージオーディオに出会ったのは大学卒業後、赴任先の札幌在住の時だ。「そろそろオーディオ替えたいなぁ」と思っていた。そして聴くジャンルもいつかは辿り着くのだろうと思っていた生演奏・生楽器のみの音楽…JAZZ、クラシックを聴きたいと思っていた。そんなある日、たまたま仕事中にまだオープン直後の「札幌音蔵(おんぞう)」の前を通りかかった。住宅街にあるちょっと変わったオーディオショップだった。オーナーさんは日本を代表するメーカー出身の方と札幌大手の販売店出身の方の2人。一念発起して独立したばかりだという。
・衝撃的出会い
中を覗くと骨董品のような見たこともないスピーカーやアンプ、プレイヤーが置いてある。だが何故か心惹かれ当然のように中へ入った。なんせ30年以上前のことなので記憶も曖昧だが、確か「そろそろ今流行のセレッションなど海外製のスタンド付小型2ウェイ辺りにしようかと思う」なんてことを話した気がする。そして「ところがどんな高級機を聴いてもちっともピンとこない」「クラシックも聴きたいが何から聴いていいのやらさっぱりわからない」…などと話した。何もわからない私を横目に、にこにこしながら居並ぶスピーカーの中でも一際古ぼけた一番外側に置かれた幾分小さ目の足付きのものを鳴らしてくれた。確か相当古い録音でドリス・デイの「Close Your Eyes」だった。
…瞬間・吹っ飛んだ!そして松田優作ばりに「なんじゃこりゃ!?」
今迄に見たことも聴いたこともない種類の音である。録音自体は古いのに実体感がケタ違いだ。というか言葉で言い表せない。理屈でレンジがどうのフラットがどうのとよく言うが、そんなことは全部吹っ飛んでどうでもよくなる。そもそも半世紀以上も昔の機器なのだからレンジなんてたかが知れている。なのに何でこんなにリアルで心に染み入るのだろう。…この瞬間、自分の人生の半分は決まったようなものだった。大袈裟ではなく本当にそう思った。それが以前使用していたTANNOY Corner Canterbury(タンノイ/コーナーカンタベリー)である。但し、オリジナルは非常に貴重で高価なため、当時の自分にはおいそれと買うことはできなかった。そして完全なオリジナルを手に入れるまでにはここから20年を要することになる。