女子高のバレンタインデーを懐かしむ
女子高のバレンタインデーは、祭だ。
巷の少女漫画では、女子高生のバレンタインデーは密かに想いを寄せる男の子に愛情込めた手作りチョコをドッキドキで渡すものと相場が決まっているが、女子高では違う。
バレンタインデーは、女の子の、女の子による、女の子のためのイベントになる。
①友チョコを量産
とにかく量産が最優先命題。大量に作ることのできる、パウンドケーキやらスコーンやらシフォンケーキやらクッキーやらを何度も何度も焼く。
たまにマカロンなど凝ったものを作ってくる子もいて、彼女たちは一目置かれる存在となる。
学年を増すにつれて、手間のかかる包装作業はしなくなり、巨大なタッパーにお菓子を大量に詰めて配り歩くようになる。
②部活の先輩への本命チョコ
女子高にも本命チョコはある。
女子高の部活には必ずと言っていいほどカリスマ的存在・イケメン枠・クール系美女といった、後輩たちから熱い尊敬の眼差しと熱烈な愛情を注がれる存在がいるものだ。そうした憧れの先輩へ本命チョコを渡すべく、せっせとスイーツ作りに励むのである。もちろんタッパーで渡すはずもなく、こだわりのラッピングを東急ハンズで調達する。
③昼休みのお弁当
バレンタインデーの日のお弁当はなし。
お菓子だけをひたすら食べ続ける。もはやフードファイターである。ブラックコーヒーが欠かせないので、登校途中に買っておく。
④救世主となる人々
たまに、おかきを作ってきたり、おでんやら煮物やらを持ってくる人がいた。口が糖分でいっぱいになった女子高生たちにとって、しょっぱいものの供給は救世主でしかない。
「結局煮物だよね〜お出汁最高、やっぱうちら日本人だわぁ〜」とか言う。
とにかく懐かしいバレンタイン祭。
大学生になって恋人に手作りスイーツを贈ったり、社会人になって高級チョコを自分のために買ったりしたが、やっぱり女子高のバレンタインデーが一番思い出深い。
もう一度あの祭を楽しみたい気もするが、アラサーになった今、あんな風に無尽蔵にスイーツを食べ続けるのはもう胃が耐えられないだろう。