浄水槽とデジタル地図活用
GIS芸人のいりやまです。
ここ最近いりやま的にアツい「浄化槽」関連の話題に触れたいと思います。
|浄化槽の点検にはなぜGISが有効なのか?
浄化槽清掃や浄化槽法定点検の業務では、清掃のために多くの顧客を巡回して作業します。
これを配車担当者が毎日予定を組み立てています。
人間の知恵と経験はすごいもので、さまざまな条件を加味して組み立てます。
条件が多すぎて、すぐにできる芸当ではありません。まさに職人技です。
複雑な条件とは以下のようなものです。
この計画を行う上で「住所」は効率に影響するわかりやすい条件です。
まったく違う地域をまわれば移動時間がかかりますから効率は下がりますね。また、収集センターへの往復も減らしたいところです。
|そもそも浄化槽とは?
さて、そもそも浄化槽とは?という点もご説明しておきます。
・下水設備でいいんじゃないの?
国交省は「下水道は着実に整備され、公害国会前(昭和45年頃)は、8%であった下水処理人口普及率が、平成29年度末には約79%(汚水処理人口普及率は約91%)まで向上しました。」と発表しています。
しかし、下水道のインフラ整備、保守には多大なコストがかかり鈍化しています。
・浄化槽の強み
浄化槽は、生息している微生物を利用して、各家庭のトイレやキッチン、お風呂場などから流れてくる生活排水をキレイにします。地球のために必要なことですね。まさにSDGs。
インフラとしてどうでしょう?
個人宅の負担は以外と大きいです。設備導入費用、維持するために点検費用、法定検査費用などがかかります。
「下水のほうがいいじゃないか!」となりそうです。
しかし、現在の日本の人口が減少傾向にあり、住む家も離れ離れになれば下水設備はコスト高になって、まわりまわって下水料金が値上がりせざるをえません。
場所を問わず設置できる、大がかりな費用をかけず、浄化槽は優秀なインフラ設備です。
|浄化槽の点検でのデジタル地図活用
それでは、具体的にどのように活用していくかをお伝えします。
先程の計画において、巡回ルートを把握するために、地図をひろげる、というのは通常どなたでも行うことかと思います。
・従来の地図活用
では、現在、浄化槽清掃業務でどのような地図を使っているのでしょうか?
それはゼンリン住宅地図です。
ゼンリン住宅地図は、世帯名称が表記されている日本で唯一の地図です。紙であるため広範囲を見ることができます。
しかし、お客様の場所を調べたり、確かに便利ですがPCやスマホのように「検索」することはできません。
使い慣れていても、ちょっと時間がかかりますよね。
また、紙に書き込んだメモは年度更新で本を買い替えると転記は面倒です。
・GISによるメリットはあるが、条件が複雑すぎる?
では、この複雑な計画をシステムが自動で計算してくれたらどうでしょうか?
配車担当者の負担は激減しますね。
ちなみに、距離が近い順にまわる巡回セールスマン問題であれば近似解を求めることができます。
これに様々な条件を加味することができるのか?じつはなかなか良いアルゴリズムが出てきませんでした。
・強力な助っ人=豊橋技術科学大学 松尾 幸二郎 准教授
「自動計画アルゴリズム」で困っていたところ、
豊橋技術科学大学 松尾 幸二郎 准教授にご相談し共同研究していただけることになりました。
松尾先生は、交通現象・交通行動を科学的に捉え,安全・便利・快適で地域社会と調和のとれた交通システムのあり方とその実現方策を追及するための研究に取り組まれております。
※内容について松尾先生への直接相談はご遠慮ください。
※掲載について松尾先生の承認を得ております。
・アルゴリズム開発
強力な助っ人のご助力を得て、アルゴリズムが開発できました(それでも数ヶ月かかりました)
実装後は、
・もっと仕事をタイトにスケジュールしたい
・半日浄化槽清掃でない仕事をする場合も加味したい
など課題が発見されましたが、
パラメータの調整やアルゴリズムの改変を行い、無事お客様の満足する計画が自動で作成できるようになりました。
・GISの提供した価値
まずは人的工数の削減です。
そして、自動計画することで車両が論理的に最適な距離を移動することになり、ブレが減ります。
排気ガス削減にもつながりますね。
|まとめ
今回は、浄化槽点検でのGIS活用についてお伝えしました。
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