日本測地系と世界測地系:違いは?日本測地系はどこで使う?
GIS芸人のいりやまです。
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測地系とは
地球上の位置を経度・緯度で表わすための基準を「測地基準系(以下測地系)」といい、地球の形に最も近い楕円体で定義されています。
測地系の主な要素
座標系:測地系では、緯度(南北の位置)、経度(東西の位置)、高度(海抜からの高さ)を使って地球上の任意の位置を表します。これらの座標は、地球楕円体に基づいて定義されます。
座標系:緯度(南北の位置)、経度(東西の位置)、高度(海抜からの高さ)を使って地球上の任意の位置を表します。これらの座標は、地球楕円体に基づいて定義されます。
原点:地球上の特定の場所を基準とするための原点が設定されています。
測地系には日本測地系と世界測地系があります。
2022年4月1日に改正測量法が施行され、測量法で規定されている「測量の基準」が、日本測地系から世界標準である世界測地系に移行しました。
以下、それぞれについて解説します。
日本測地系 (Tokyo Datum)
・準拠楕円体:ベッセル楕円体
・原点:旧東京天文台
日本測地系は、明治時代に整備され、2002年の測量法改正まで公式に使用されていた日本独自の測地系です。準拠楕円体としてベッセル楕円体を採用し、天文観測によって決定された経緯度原点(旧東京天文台)の値と原方位角を基準として構築されています。
日本測地系は、主に日本国内での地図作成や土地の測量に使用されてきました。しかし、この測地系は日本国内の地形に特化しており、国際的な基準とは異なるため、国際的なデータとの整合性が取りにくいという問題がありました。
そのため、近年では世界測地系への移行が進められています。日本測地系と世界測地系の間には、400メートル程度のずれが生じることが知られており、正確な位置情報を求める場合には、このずれを考慮する必要があります。
日本測地系を利用している組織
日本測地系を採用している組織の例を挙げます。
国土交通省: 日本の公式な地図や土地の測量に関する業務で日本測地系を使用していました。ただし、2002年以降は世界測地系への移行が進められています。
地方自治体: 地方の土地測量や都市計画、地図作成などの業務で日本測地系を使用していた自治体も多いです。
日本の測量会社: かつての土地測量や地図作成の業務で日本測地系を採用していた会社もあります。
農林水産省: 農地の測量や農業基盤整備に関する業務で日本測地系を使用していた可能性があります。
日本の大学や研究機関: 地理学や測量学の研究、教育の中で日本測地系に関する研究やデータの取り扱いを行っていた組織もあります。
これらの組織も、技術の進展や国際的なデータ交換の需要に応じて、世界測地系への移行を進めている場合が多いです。
現在の採用状況を確認する際には、各組織の公式情報や関連文書を参照することをおすすめします。
世界測地系
世界測地系はVLBIや人工衛星を用いた観測によって明らかとなった地球の正確な形状と大きさに基づき、世界的な整合性を持たせて構築された経度・緯度の測定の基準で、国際的に定められている測地系をいいます。
世界測地系は、概念としては一つのものですが、国ごとに採用する時期や構築に当たっての詳細な手法及び実現精度により異なります。
日本では下記の世界測地系が使われています。
WGS 84(World Geodetic System 1984)
・準拠楕円体:WGS 84楕円体
・原点:地球の重心
米国が構築・維持している世界測地系です。この測地系は、GPS (Global Positioning System) などの衛星測位システムで広く採用されており、国際的な位置情報の標準として使用されています。
JGD2000(Japanese Geodetic Datum 2000)
・準拠楕円体: GRS80 楕円体
・原点:地球の重心
日本で構築された世界測地系です。
ITRF 94座標系を使用しています。
JGD2011(Japanese Geodetic Datum 2011)
・準拠楕円体: GRS80 楕円体
・原点:地球の重心
2011年に起きた東日本大震災に伴い、大規模な地殻変動が観測されたことにより、測量成果が改訂され、JGD2000に代わり用いることになりました。
日本が現在採用している測地系で、世界全体で共通に利用ができる世界測地系であるITRF(国際地球基準座標系)に基づいています。
日本測地系と世界測地系の違いは?
「地球上の位置を経度・緯度で表わすための基準」が異なります。
20年以上前の古い基準が日本測地系、現在は世界測地系と理解しておくと良いでしょう。
地図データは、日本測地系もしくは世界測地系で作成されています。
地図データを利用する場合、しっかり確認しておくと良いですね。
参考: 国土地理院ウェブサイト