無形固定資産が価値を生む時代
トヨタのバランスシートは、2020年3月期まで無形資産の項目が存在しなかった。一方でソニーには有形資産とほぼ同規模の無形資産が9千億円が計上され、中身は、音楽、映像の版権やゲームが多い 。
EV事業でもデータやソフトウェアを含め、そうした資産を増やしていくはずだ。
損益計算書の視点で、それを言い換えるなら、トヨタは営業利益を有形資産で生み、ソニーは無形資産で過半を稼ぐ。アセットライトとは、単に有形資産を削ることではなく価値ある無形資産に変換するということなのだろう。
米国ではアップルの時価総額が2兆ドルを超すなどGAFAと呼ばれる企業の価値がコロナ禍でも拡大している。背景にあるのは無形資産で稼ぐ事業モデルでありソフトを巧みに駆使して差別化する事業モデル。テスラもそれは共通する。
自動車産業は「CASEの時代」だという。コネクテッド、自動運転、シェアリング、EVの内、 CAS が無形資産に属しているとの認識はまだ少ない。Eも有形資産だがスマホと同じ無形世界の入り口になる道具。
そんな時代に向かい自動車と強く連関する日本の製造業は無形資産より有形資産への投資が他の主要国と比べて今なお多い。米英は有形無形が拮抗し、中国のは無形に厚い。
有形資産で築いた製造業の優位性は維持していきたい。だが、無形経済の時代への準備に目配りする必要がある。ソニーの時価総額が国内上位2位まで浮上している。
無形資産を使うビジネスモデルに世界の投資マネーの期待が膨らんでいるとしたら、日本の製造業はもっと軸足を柔軟に置く経営に変わっていく必要がある。
※日経新聞8月記事参考