沈丁花
「夏が終わるから、今日は休む」
いま私がそう言ったとして、止める人は、
たぶんいない。
同じことを過去の自分が夏の終わりにつぶやくことを考えて、一年ごとに遡る。
やっぱり、止める人はいない。
そもそも一年ごと、の記憶が曖昧だった。
私だけが私のその呟きを許せなかった。
いつも。
休むことは、出来ないことではないのに
いつも私が私を苦しめた。
それは高校を卒業して、選択肢の増えた大学でも続いた。
いつも何にも手を抜けなかった。
「わたしにはせめて頑張っていないと価値がない」に近い強迫観念があったのだろう。
立派な何かになれてもいないけれど、
できることをしていないとできていない人間に思えた。
あるとき全部崩れた。
なんなら、頑張ってるつもりのなかったところで、「頑張ってない君の方が好きだった」と振られた。
夏の終わりだった。
夏が大嫌いだった。
終わるから休むなんて我ながら訳がわからない。
あの感じが始まるから嫌なだけだ。
嫌な思いだって別にしていない。
「一人のために描いた夢を
誰かに使いまわした
そんなこともあるさと笑える僕も
きっとセプテンバー」
(RADWIMPS/セプテンバーさん)
秋は、私が私を生きる季節だ。
人の中で、私が私を思う季節だ。
誰かを、思うからこそ。