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『はりねずみの はなちゃんと ゆうきのはな』

こちらの 『はりねずみの てちてち隊(たい)』の はなちゃんが ちいさいころの おはなしです。


『はりねずみの はなちゃんと ゆうきのはな』


まだ かぜの つめたい あるひ
はりねずみの はなちゃんは 
ママと いっしょに
てちてちと あるいて おさんぽに でかけました

こうえんまで くると 
こどもたちが すべりだいで あそんでいます

「たのしそうね! いっしょに あそんで もらう?」
ママが いいましたが
はなちゃんは 
「せなかの はりが ききーっって いうから
すべりだいは いや」
といって ママの かげに かくれてしまいました

はなちゃんの おうちは 
まだ ひっこしてきた ばかり

しらない こどもたちと あそぶのが 
はずかしかったのです

「そうよね
 ママだって ごきんじょさんと おはなしするのに
 ちょっと ゆうきが いるもの
 でも そのうち なかよく なれるわ」

ママと はなちゃんは 
ベンチで サンドイッチを たべて 
てちてちと かえっていきました


おうちに つくと おにわで ママが いいました

「はなちゃん!
 もうすぐ この おはなが さきそう だから
 おせわ してくれない?
 まいあさ おみずを あげて ほしいの」

うえきばちの おはなが ちいさな つぼみを つけています
「うん! まかせて!」
はなちゃんは よろこんで ひきうけました


「どんな おはなが さくんだろう? たのしみだわ!」
はなちゃんは まいにち 
おみずを たっぷりと あげました

やがて つぼみが ふくらんできて
さきっぽから しろい いろが みえてきました
「まあ まっしろな おはな なのね! 
 すてき!
 はやく さかないかなあ」
はなちゃんは たのしみで なりません


そのよる
はなちゃんは ゆめを みました
あの つぼみが 
なぜか したを むいています

「どうしたの? おみずが たりないの?」
はなちゃんが しんぱいして ききました

「ううん 
 いつも ありがとう
 わたし さくのが とっても こわくて……」

そう つぼみが いうので 
はなちゃんは びっくりしました

「なにが こわいの?」

「だって
 つぼみのそとは こわいところ かもしれないでしょ?
 それに
 わたしが どんな おはなに なるか わからないわ
 みんなから ばかに されるかも」

つぼみは うつむいたまま いいました

「なーんだ だいじょうぶよ!
 あなたが いるのは うちの おにわなの
 くいしんぼうの いもむしが やってきたって
 わたしが この はりで まもってあげる!

 あなたはね まっしろな おはな なのよ
 きれいに きまってるわ」


よくあさ 
めを さました はなちゃんが おにわに でると
ゆめで みたのと おなじように 
つぼみが したを むいていました

「あら? まだ あんしん できないことが あるのかしら?」

はなちゃんが ママに そうだんしようと 
おうちに もどると
ママも つぼみ みたいに うつむいて いました

「ママ! どうしたの?」

はなちゃんが 声をかけると
ママは はっと かおをあげて いいました

「ああ はなちゃん……
 そのうち はなそうと おもってたんだけどね
 ママ
 しゅじゅつを しないと いけないの」

「えっ! それって こわくないの?」

「ママ とっても こわいわ
 でも しかたないのよ
 ゆうきを だして のりこえないとね」

そういって ママは ほほえみましたが
いままでに みたことのない 
よわよわしい えがおでした


「 ママ……」
おもわず そとに とびだした はなちゃんは
がまん できなくなって なきだしました

「だから ママは 
 おはなの おせわを たのんだのね」

すると
ゆめで きいた つぼみの こえが しました

「きょうは げんき ないのね?」

「ママが ママがね……」
ないているので うまく ことばに できません

「あのね ゆうきが…… ゆうきが いるんだって」
はなちゃんが やっとの おもいで いうと
つぼみは びくん!と はじかれたように ゆれて いいました

「ゆうき ですって?
 それって どこに あるのかしら
 はなちゃんが あんなに はげまして くれたのに
 わたし どうしても ゆうきが だせないの」

「まだ しんぱいなことが あるの?
 ぜんぶ わたしが やっつけて あげるよ?」
はなちゃんが いうと

「ありがとう
 わたしね まっしろな おはなじゃないみたい
 さいたら 
 はなちゃんを がっかり させちゃうし
 みんなからも 
 おかしな はな だと おもわれるわ」

つぼみが しょんぼりとして うちあけました

「まっしろ じゃなくたって だいじょうぶよ!
 どんな いろでも かまわないの
 わたしは あなたに さいてほしいな
 だって 
 つぼみの ままで いたら さみしいじゃない?」

はなちゃんは せいいっぱい はなしました


「はなちゃん? はなちゃん?」
ママの こえが します

はなちゃんは なきながら おにわで ねむってしまったのでした
「ゆめ だったんだ」


「ねえ はなちゃん
 ママね あしたから にゅういん することに なったの
 しばらく パパと おるすばんして もらわないと いけないわ」

「えっ! あした なの?」

ママの ことばに はなちゃんの むねが 
ぎゅっ!と なりました

そのよるは 
はなちゃんも どきどきしながら ねむりました

とうとう あさが きて しまいました
ママが にゅういん するひ です

いっしょに びょういんに でかけるとき
はなちゃんは みずやりを わすれていることに きがつきました

「わあ! いけない!
 つぼみさん おそくなって ごめんね…… 」

そう いいかけて はなちゃんは 
はっと しました

そこには 
しろと ピンクが うつくしく まざりあった
みたことも ないような 
かわいらしい おはなが さいていたのです

「なんて きれいなの!
 もう つぼみさんじゃ ないのね!
 がんばったんだ! がんばったんだね!」

そう はなちゃんが いうと
おはなが にっこり わらったような きがしました


「はなちゃん! だいじょうぶかい?」
パパの こえが しました

「あっ そうだ! おはなさんも きて!」
はなちゃんは おはなの うえきばちを かかえて
もどりました

「まあ! おはなが さいたのね!
 なんて すてきなの!」
ママが ひさしぶりに うれしそうな かおを しました

「あのね つぼみさんがね 
 すごく ゆうきを だしたのよ」

びょういんに むかう くるまの なかで
はなちゃんは ゆめの はなしを しました

ママは 
「しゅじゅつが おわるまでは
 こわい きもちは きえない かもしれないわ
 でも ゆうきが だいじって よく わかったわ
 ママも がんばるね!」
と やくそく するように いいました

それから はなちゃんは 
ママも おはなも いない
さみしい ひびを すごしました

そして ようやく パパと いっしょに 
おみまいに いける ひが きました


びょうしつには にこにこ している ママ
そして ますます おおきく ひらいた 
あの おはなが ありました

「はなちゃん!
 この おはなを みていると 
 とっても げんきに なるのよ

 がんばって さいたから 
 きっと ゆうきの かたまり なのね!
 はなちゃんが はげまして あげた おかげね」

ママが いうと
おはなが うなずくように ゆれました

「もう すっかり はるの かぜだね」
まどを しめながら パパが いいました

ガラスごしの あかるい ひざしに
パパも ママも はなちゃんも
はりつめていた きもちが ゆるんでいくのを かんじました


かえりぎわに
はなちゃんは おはなに そっと いいました
「おはなさん ありがとう!
 にゅういんに まにあうように さいて くれたんだね
 わたしも ゆうきを だすね!」

「はなちゃーん! そろそろ いくよー!」
パパが よんでいます

「はーい パパ!
 あのね 
 あとで こうえんに いっても いい?」


おしまい

(C) 2022, M.Tanase


こちらに、つづいています。

てちてち隊の よつばくんの おはなしも あります。

https://note.com/maplegleek/n/nd122fe6ffb01