たった1度きり、わたしが会ったオバケの話。
わたしは、長女を産んで暫く、放心状態だった。
初めてのことだし、何だかわからないけど疲れてしまった。が、とりあえず、大仕事を終えた自分を労おうと思っていた。
お正月三が日だというのに、その日はお産が多かったようだ。運悪く、個室がいっぱいで入らないとのことで、その夜わたしは6人部屋で過ごすことになった。看護師さんは、明日になれば、個室が空くからと言っていた。
何もする事がなく、寝てるのか、起きてるのか、わからないような朦朧とした意識の中で、だだ横になっていた。夕方なのか、夜なのかもわからない。時計を見る気力もない。
そうすると、わたしの右足のほうに、緑色の手術服のようなものを着た人が、話しかけてきた。
「赤ちゃんは男の子ですか?女の子ですか?」
「女の子です」
咄嗟に答えて、我に返った。
声は、女の人の声だった。顔は見えなかった。
果たしてこの答えは正しかったのだろうか?
例えば、女の子と言ったことで、わたしの赤ちゃんの身に大変な事が起こるのではないか?
わたしは、いろんなことを考えながら、いつの間にか眠っていた。