僕の髪色、君の白無垢
「髪さ、染めたりしないの?」
仕事の合間の休憩時間、スマホを弄りながら話していると先輩が聞いてきたのだ。
「いやぁ、考えてないっすね。気になります?」
御年、30歳になったばかりだが僕の頭には白髪が目立つ。
今の仕事についてから急激に増えたのでストレス、だと思う。
「いや、別にそんな気になるってわけじゃないんだけど、ほら、自分結婚式するって言ってたからさ。」
写真に残るし染めないのかなって思ったんやけどと先輩は言う。
なるほどね。
普段、10分1000円でカットしてくれる駅近の散髪屋に通っている身としてはまったく毛染めというのは想像がつかない。
彼女はどうなんだろう。
次に会ったら聞いてみようと思ってその場での話は終了した。
そういう話を職場でしたと報告してみると
「染めてほしい!」
と食いついてきた。
なんなら
「私が染めたい」
そうな。
「私は結婚式で白無垢を着るでしょ。白無垢って『貴方の色に染まります』っていう意味があるって聞いたんやけど。」
「貴方だって私の色に染まってもいいでしょ?」
そんな物理的に染めて主張しなくても
もう僕は君の色に惚れ込んで変わってきているのに。
結局、君にほだされて髪も染めて当日を迎える事にしたんだ。