本や映画は切り取られた場面場面が印象に残る
昨日は陽光が暖かそうだったので、午前中、今季初めてベランダに布イスを出して陽を背中に浴びながら本を読んだ。案の定、気持ちよかった。30年以上の付き合いになるカポック(写真)も活発に光合成しているように見えた。
県立図書館で借りた同年代の作家さん稲葉真弓さんの「半島へ」。東京のマンション暮らしから三重県志摩半島の最果ての地に家を建てて住み着くという作者の私小説。読んでいて心地いい。私小説というのはどのくらいフィクションが入っているのか?
私は映画も本も、ストーリー性はあまり追わず、場面場面で感性に触れたり、読後感や観賞後感が残るようなのが好み。南木佳士さんのエッセイも気に入っている。
映画で好きなのは、「リバー・ランズ・スルー・イット」のラストシーン。2時間くらいだったかの本編は、ほんの数分しかないラストシーンのためにあると言ってもいい。もっとも、それがないとラストシーンも意味不明になるのだけど。人生の最終盤を迎え、全ての近しい人に先に逝かれ、一人残された主人公は、子供時代から通い慣れ、思い出に溢れたモンタナの渓流で一人フライフィッシングに熱中する。様々な記憶を反芻し、先に逝った弟、父親、母親、妻達との思い出を回想しながらのこのシーンは何度観ても飽きることがない。人生のゴールを意識してのこのシーンは美しい自然風景と相まって静謐。年齢的に共感できるのかもしれない。
後になって、原作の「マクリーンの川」も読んだ。作者ノーマンマクリーンの自伝的小説らしい。映画は原作に忠実に制作されているように感じた。あのロバートレッドフォードが監督、弟役のプラピが賭博好きの新聞記者を名演していた。
もう一つは相当古い映画「愛と追憶の日々」のワンシーンが印象に残っている。
ガンに罹って先に逝かなければならない母親が、反抗期真っ盛りの子供に病床でしつこく言った言葉「わかっているからね。い~い?全部わかっているからね。」
母親に対してどうしてあんな悪態をついたのか、将来、子供が後悔する日が来たときに、子供が苦しまなくて済むように・・・。究極の母性愛。
感性や好みは人それぞれ。
多様性と個性は大切です。