映画館で映画を観るとは?
初めて【映画】を観たのはどこですか?と訊かれたら、何と答えますか?
私は多分保育園で16mmか8mmで観たディズニーアニメじゃないかなと思う。だからきっと園内の体育館か教室?そのあたりの記憶はかなり怪しい。
でも映画館に初めて行ったのは覚えています。小学生になってすぐの『東映まんがまつり』、壁に色んな知らない俳優たちの写真が貼ってあって、映画館が怪しげな場所に感じた思い出があります。当時は今と違って各映画会社が自社の配給作品の直営館を各地に持っていた時代。繁華街にあった映画館は大人に連れて行ってもらえないと行けなかった。その後、角川映画やスピルバーグ映画が流行り、友人たちと見に行くようになり…これはきっと今の40〜50代にとってほぼ共通体験ではないでしょうか?
もしかしたら平成生まれの人たちは初めて観た【映画】は、殆どの人がDVDを含むテレビかもしれません。そして初めての【映画館】はシネコン? そもそも映画館にも行ったことのない、ネットで観るという人もいるかもしれない。日本で1年に映画館で映画を観た人は、35.3%にまで落ちているそう。(NTTコムリサーチ 2018年7月発表)
そんなことを考えたのは先週末に、上田映劇という、一度閉館し2年前に地元のNPOによって復活した映画館を訪れたことがきっかけでした。
2周年を記念して支配人やNPOの理事など運営に関わる人たちがステージに立って、これまでを振り返るトークが行われました。その中でそれぞれの映画体験を話したのですが、印象に残ったのは20代の支配人が以前この劇場で観た『千と千尋の神隠し』や『ハリー・ポッター』は満席だったという話。270席もあるのに!
実はこの劇場に来たのは初めてではありませんでした。数年前に『ガレキとラジオ』という、宮城県の南三陸町に出来たコミュニティFMのドキュメンタリーを上映した時。その時は閉館していたこの劇場は時々イベントなどに貸しているということでした。
前回も書いたように、今や映画館のない「空白地帯」が全国に数多く存在します。でも、上田映劇のように閉館した映画館を復活させたり、映画ファンが中心になって市民映画館を設立したりして出来た映画館も少なくありません。
そもそも「映画館で映画を観る」って何でしょう?今やスマホで無料配信でも観ることが出来る時代。わざわざ映画館に出かけてお金を払い、決められた時間に知らない人たちと狭い椅子に座って暗闇でスクリーンを見つめる。途中で止めたり、気になるところだけ見たりなんて事も出来ないのに。
実はMAPの第一弾の映画は、ベトナム映画ではなく、かつて山形県酒田市にあったグリーン・ハウスという映画館についての証言を集めたドキュメンタリー『世界一と言われた映画館』でした。1976年に火事で焼失した劇場だというのに、思い出を語る人々の目はキラキラと輝き、まるで昨日の事のように生き生きとしている。それは映画体験がその人の記憶に刻まれているからに他ならないと思うのです。
私もそんな忘れられない映画体験があります。それは中2の時に観た『E.T.』、自転車が浮かび上がる名シーンに、満席の観客が一緒にスクリーンに釘付けになった瞬間。今でも覚えています。
もちろん、映画館でなくても心を揺さぶられる映画に出会うことは出来るかもしれません。でもきっと思い出に残るような体験は、映画館の方が出来ると信じている、【映画館】信奉者の私です。